ゲイのセックスワーカーとして様々な活動をしているハスラー・アキラさん、またの名をドラァグクィーン、メロディアスさんがとっても素敵な本を出しました。
ステキなんて言葉は、一番使ってはいけない褒め言葉だといつも思っているのですが、この本はそんなことみんなぶっとばして「ステキよ!!」と言ってしまいたいくらい、愛らしい本です。
ハスラ−・アキラさんは「バイターズ」というセックスワーカー・アーティスト・ユニットを結成して、セックスワーカーとして、現場にいる人間として、セイファー・セックスの啓蒙や、セックスワーカーの権利擁護などの活動をしています。
その「バイターズ展」が東京のワタリウム美術館でこの2月に開催されて、通常の展示作品の他に、週末の夜には、夜を徹した「パフォーマンス」が繰り広げられ、会場に入りきらないほどたくさんの観客を集めたそうです。
僕が、メロディアスさんにはじめて会ったのは(拝見したのは)、5年ほど前(もっとか?)の「アッパーキャンプ」というゲイ・ナイトでした。夜通しのイベントの一番ラスト、明け方も近い頃、思いきった安いメイクと衣装(ごめんなさい!)に大根のはみ出たスーパーのビニール袋を片手に彼は登場しました。そして、「私たちは黒い羊……」というとっても切ない詩をリーディング(この詩が何なのか、知ってる人は教えてね!)。そして、リーディングが終わると、ダイアナ・ロスの「クロース・トゥ・ユー」をリップシンクで歌い始めたのでした。
僕は、その「クロース・トゥ・ユー」を聞いて、思わず涙ぐんでしまったのですよ。元々好きな歌だったっていうのもあるんだけど、なんでこんなにぐっと来ちゃうわけ?と自分でも不思議に思いながら、でも涙だけはどんどこ出てきて……。で、ふと周りを見てみれば、あっちでもこっちでも、感動してる人たちが………。
以来、このときのメロディアスさんのショーは、僕のリップシンクショーのベストになってます(ていうか、原体験かもしれない)。
さて、この「売男日記」。またしても、僕は、やられてしまいました。
読み終わって、何だかドキドキしてきて、そのドキドキが身体全体に伝わってきて、何とも言えない、「いい気持ち」。
この「売男日記」は、アキラさんがこれまでに会ったお客さんとのエピソードと現在のパートナー、との話を1ページに一つずつ綴った、言ってみれば、フォトエッセイ。
そして、全体を通じて伝わってくるのは、人と直にふれあうことからくる、何とも言えない「あたたかみ」or「肌のぬくもり」のようなものです。
97年にロサンゼルスで開催された国際売買春会議で、会場に集まったセックスワーカーたちに学者さんから質問があったそうです。「あなた達の言っている事を聞いていると、あなた達は客に対してセックスを売るだけじゃなくて、まるでカウンセラーのように、またはヒーラーのように接しているのですか?」と。
文中に語られる、アキラさんと客との交流(あえてこう言うけれども)は、ほんとに直(じか)で生(なま)です。ぼくがドキドキしたのも、その直で生なかんじが伝わってきたからかもしれません。
そして、絶対に人とふれあうことに対して「閉じて」いかない、その決意のすがすがしくも、たくましいことといったら。
メロディアスさんことハスラー・アキラさん、なんてイカした、高級コールガール、もとい売男なんだろう(そんなアキラさんを愛しているパートナーの彼もイカす!)。
会うと、ついドキドキして、ろくに話もできなくなってしまうのですが、今度会ったら、も少しちゃんとお話をさせてもらおうと思ってます。
あ、でも、そんなふうにドキドキさせてしまうことこそ、アキラさんのアキラさんたる所以かもしれませんね。
ちなみに、この本はワタリウム美術館でしか売ってません(もったいない!)。
興味がある人は、どうぞ問い合わせてゲットしてみて下さい。
美術館が出してるだけあって、とっても洒落たつくりの可愛い本です。
★★★★★!!