関根信一の観劇!感激!

  

「王様と私」

出演 高島政宏 一路真輝 他

12/07(火)

 またしても、帝劇です。
 「王様と私」、映画では見ているのですが、舞台は初めてです。
 それも、かなりしぶしぶ。たまたまチケットが手に入ったので、じゃあ、見てみようかと、かなり期待しないで出かけました。
 ところが、これがすごかった。もう、ほんとにごめんなさいってかんじ。
 ついこの間、来たばかりの帝劇なのに、こうも舞台の印象が違うのかっていうのが、まず第一のびっくり。「西鶴一代女」も面白かったし、群衆の使い方も見事だったんだけど、それとは全然違うやり方で、この「王様と私」の舞台は、きっちり埋まってる。
 まだまだ幸せな時代のミュージカルだから、沢山のアンサンブルが登場します。もちろん王様の子供を演じる子役もいっぱい。でも、すごいと思ったのは、少ない人数がきっちり芝居をしてるシーンなんだな。二人か三人の登場人物しか舞台にいないのに、きっちり空間が埋まって、劇場のだだっぴろさをみじんも感じさせない。
 一路さんのアンナは、ちょい泣きすぎかな?とは思ったものの、素晴らしかった。高島(兄)の王様は、シャムの未来を憂えている王様というよりも、子沢山のお父さんが右往左往しているみたいでかわいかった。でも、期待していた以上に歌が上手いのでびっくり。ラストの臨終の場面の芝居も、よかった。
 映画で一番苦手な「劇中劇」の場面が、こんなに面白くなるとは思わなかった。
 急にシャムへやってきたイギリスの大使に「シャムは野蛮な国ではない」ことを証明するために見せる芝居、これが、ストウ夫人の「アンクルトムの小屋」なんだけど、この「奴隷解放」のお話を、タイ舞踊(&衣装・メーク)で見せる。これが、最高に面白かった。いつの間に、日本のミュージカルのアンサンブルって、こんなにレベルが高くなったんだろう。とにかく、ダンサーの動きを見てるだけで、もう最高に楽しかった。少しもハラハラさせられることなく、ただ、面白く見てられる。それは、当たり前のことなのだけど、昔のミュージカルは決してそんなことなかった。歌が聞いてられなかったり、ダンスナンバーになると、急にダサダサになったり……。レミゼラブル以降、こうなったんじゃないかしらって気が、僕はしてます。先月の「西鶴一代女」の夜鷹のコーラスの人たちだって、きっと、そういうところから出てきてるんじゃないかしら。
 きっちりした腕を持った役者さん達が、いいアンサンブルで、楽しく演じて見せてくれる。そこで、初めてミュージカルは、楽しい演劇になるのですね(当たり前か?)。
 しかも嬉しいのは、みんながみんな同じ「色」になっているのではなく、一人一人がそれぞれ全然違うのに、ステキに解け合っているというところ。
 僕は、最近の劇団四季のミュージカルが苦手なのですが、それはみんながみんな同じ歌い方、踊り方、演じ方をしているからです。
 この「王様と私」は、一人一人、みんな違う歌い方、演じ方をしてる。たとえば、一路さんと高島(兄)と本田美奈子さんは、三人とも全然違う。でも、それが面白い。
 なかでも、第一夫人「チャン」を演じた秋山恵美子さんは素晴らしかった。一番最後の場面、臨終の床にある王様が息子に王位を譲る場面、新国王は、「ひきがえるのように醜いお辞儀はこれから禁止する」というおふれをまず始めにするのですが、その命令にしたがって、男達はきちんとした敬礼を、そして、女達は、西洋式のお辞儀(ドレスを持って、お辞儀する、あれ)をするのですが、これがすごかった。初めはとっても封建的なシャムの女だった第一夫人が、最後の最後に見事な西洋式のお辞儀をする。これは、言ってみれば、この「王様と私」というお話の中で一番大きな変化かもしれない。他の夫人達から一人離れて中央にいる秋山さんが、それは見事にお辞儀をした、その瞬間、大詰めの幕は降りたのでした。さすが、プリマドンナ(秋山さんは二期会のプリマドンナです)! あんな見事なお辞儀は見たことない。まさに、幕を切るにふさわしい、最高のお辞儀でした。
 僕は、子役が出てくるたびに、またしてもポロポロ泣き、一緒に行ったS嬢に「もうトシね」と呆れられました。
 でも、おもしろかった。まだ見てない人には、ぜひオススメします。
 ★は、秋山さんのお辞儀への花束分をプラスして、満点の★★★★★






 

 

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