「オープニング・ナイト」稽古日記

第3週(8/7〜8/13)

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 8月9日(水) 

 稽古の前に、新宿の京王デパートの古本市で本を買ってから稽古場に向かう。
 僕はこの手のイベントにとっても弱い。
 ずっと探してる本が何冊かあるんだけど、それが見つかるんじゃないかと思うと、少しの時間でもちょっとのぞいてみたくなる。
 今日、見つけてゲットしてきたのは、「テネシー・ウィリアムズ回想録」と女優渡辺美佐子さんのエッセイ「ひとり旅 一人芝居」。どっちもずっと探してたor見つけても妙に高くって(値段が)パスしてた本なんだけど、手頃な値段だったので、即ゲット!
 「テネシー・ウィリアムズ回想録」は彼が「ゲイ」であるということを結果としてカミングアウトしてる本。ずっと昔図書館で借りて読んだきりなので、これから楽しみ。じっくり読んでみよう。
 渡辺美佐子さんのエッセイは、井上ひさし作の一人芝居「化粧」についてのことが書いてある。その中の「口立て稽古」という一章をを随筆のアンソロジーで読んでいて、元本をずっと探してた。旅の一座の女座長の一人芝居「化粧」を上演するまでのいろいろはとってもおもしろい。中でも、梅沢劇団の楽屋で「口立て稽古」をしてもらったあと、「じゃ、美佐子さん、やってみましょう」と本番の舞台に立たされてしまう話は何ともいえないいい話だ。何度読んでもついほろっとしてくる。
 「美女と野獣」という芝居で、僕はさんざんぱら「化粧」をしたり落としたりしたんだけど、台本を書き始めた時から、この「化粧」というお芝居とこの渡辺美佐子さんの「芸談」はずっと頭の中にあったんだった。稽古場へ向かう、山手線の中で、早速読んでみて、案の定、涙ぐんでしまって、かなり怪しいヒゲ面の男になってたかもしれない。
 で、稽古6回目。
 今日は、久しぶりに全員が揃った。
 こないだと同じ、とっても狭い稽古場なので、かなり息苦しいかんじ(?)。
 輪になってするいろんなゲームもなんだか混乱気味。
 で、また、「人はパンのために芝居をするんじゃない云々」の台詞をみんなでやってみる。
 人数が多いので、僕は、見学、ていうか、外からみんなを見る役目。
 歩きながら言ってみよう‥‥の「歩き」をいろいろな歩き方でやってもらう。
 スローモーション、それから、声もウィスパーにしてみたり。その二つを組み合わせたりしてね。
 後半は、読み合わせ。
 まず始めに、オープニングの「渡り台詞」の分担を決定する。
 去年の初演の時、やってて気が付いたことなんかを考えあわせながら、割り振ってみて、決定。
 僕のパートも新しくなったんだけど、やっぱり新鮮でドキドキする。
 今回は再演だから、みんな「覚えのある台詞」なんだけど、こうして「はじめてしゃべる台詞」があるのはいいことなんじゃないかと思う。別に、「新鮮さ」を無理矢理キープしようとしてるわけじゃないけどね。
 頭から読んでから、「今回はこうやってほしいんだわ」と成瀬役のノグに「演出プラン」の説明。
 かなり時間をかけて説明して、さて、もう一度ってかんじだったんだけど、なんか、うまく伝わらなかったみたい。何も言わないうちの方がずっとよかった。
 とりあえず、「その人じゃない」と伝える。
 明日の稽古場では、どんな人(?)が来るか楽しみだ。
 稽古の後、みんなで一緒に駅まで歩く途中、僕とますだいっこう氏は、途中の酒屋で缶ビールを買って、「路上飲み」しながら歩くんだけど、今日は、僕等二人に若さんが加わって3人になった。
 稽古の後の一杯は最高においしい。
 でも、居酒屋で飲んだくれるほどでもないしね。で、「路上飲み」。
 酒屋さんは、週に何度かやってきて(しかも同じ時間に)、缶ビールを1本か2本ずつ買って帰る僕等のことをどう思ってるだろうか?
 今度は、酒屋の向かいの飲み屋にも寄ってみようかね? 

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 8月10日(木)

 稽古7回目。
 久しぶりに阿佐谷の稽古場。
 昨日までと違って、広々としてる。
 今日は若さんと高市がお休みなので、メンバーは9人。
 オープニングの「渡り台詞」の稽古から。
 昨日、割り振った台詞を、いろいろ言ってみる。
 なかなかいいかんじ。 森川くん以外は、去年一度やってるこの場面なんだけど、今回、去年と台詞のわりふりを替えてみたので、とても新鮮。
 「ハムレット」「マクベス」「お気に召すまま」「ガラスの動物園」「欲望という名の電車」「毛皮のマリー」。それぞれの芝居の、どんな場面で誰が誰に対して言う台詞なのかという説明をして、それからもう一度。また、もう一つおもしろくなる。
 実際の舞台では、舞台上には、10脚の椅子があるので、その椅子をどう使い、どうよけていくかというのが、結構大事な問題なんだけど、今日は、椅子を使わないままで終わる。
 その後、続けて、仙道と成瀬の場面。
 昨日「その人じゃない」と言った、ノグの成瀬は、今日は「その人でいってみて」という人が来てくれた(?)。
 仙道と成瀬が「劇場」にいる時のいかたの違い、距離の取り方なんかを話して、もう一度。
 僕は、久しぶりに芝居をしているようで、なんだか気恥ずかしい。
 今日の部屋は、いつもよりも声が響くし、僕は冒頭のこの場面で「かもめ」のニーナの台詞をしゃべるし、みんなは見てるし(当たり前だ)、ダメだしをする声までもがどこか「芝居な声」になってるようで、落ち着かない。
 時間が来たので、今日はここまで。
 ノグとはいろいろやってみようと話す。
 今日からしばらくノグは金沢の実家へ帰省。
 この場面はしばらくできないけど、とりあえず、ここまでやれて良かったねってかんじ。
 明日からは、場面ごとの稽古を詰めていくことになる。
 帰りに阿佐谷のキオスクで缶ビールを買い、いっこう氏と「路上(ホームor電車)飲み」続く。
 次の稽古は、8/12(土)。

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 8月12日(土)

 昨日は、絶対王様の「ももんがの臭い」、そして今日は新橋演舞場の新派公演「頭痛肩こり樋口一葉」。
 芝居の稽古をしていると、妙に芝居が見たくなってしまう。何か刺激がほしくて‥‥というのはもちろんあるんだけど、「現場」にいる感覚がとってもほしくてしかたがない。
 わくわくして見に行って、終演後に、やっぱり芝居は見るよりやるものだと思って、帰ってくる。
 「観劇日記」のアップはまとめてするので、ちょっと待っててね。
 稽古8回目。
 初めての顔ぶれが加わった稽古は、初めのうち、「何てたくさん人がいるんだろう」と思いながらやってることが多い。
 今回の「オープニング・ナイト」も出演者は11人。けっして多い人数じゃないけど、稽古場が狭いせい&男子ばっかり(それも濃いめの)なせいで、いつも「わあ、いっぱいいる」ってなかんじだった。
 それが、今日は、あんまり感じられなくなってた。
 こういう日が毎回の稽古で必ずある。新しいメンバーが「お客さん」じゃなくなって、みんなで一つのチームになってるってかんじがするときが。
 そうなると「たくさんいる」かんじは全然なくなって、いい意味で、みんなの存在がうっすらと軽くなってくる。稽古がおもしろくなってくるのは、いつも、ここからだ。
 今日は、オープニングの木澤役がらみのところから。高市氏と若さんと二人分の稽古を、お休みのノグのかわりにイワイワにつきあってもらって、やってみる。
 木澤役をダブルキャストということは、相手役の僕の稽古量は倍なんだということに改めて気が付く。
 そんなことに気が付いて、ドキドキしてるってことは、まだまだ「役者にカンバック」できてないってことなのね。
 若さんは初めてなので、いろいろとやってみて、基本的な演出プランを伝える。高市氏は、初演をなぞってみてくれたので、「今回はこうしてみて‥‥」的なことを話してみる。
 それから、ほかの役の最初の登場の場面、次々と電話がかかってくるところを。
 「もっと僕を困らせるにはどうしたらいいか」を企んでみてくれるように話す。僕ってのは、演出家関根じゃなくて、劇中の仙道のこと。
 初演のまんまでもまあいいんだけど、今回は、もっと濃いキャラをつくってほしい。
 それぞれに「こうしてほしい」方向性と、人物の役割分担の話をする。
 この「オープニング・ナイト」は、登場人物の関係が、ものすごく図式的にはっきりしてる。三島の「サド公爵夫人」じゃないけど、それぞれの人物が担ってるものは、ほとんどあるイメージを体現してる。それを確信犯的に、おもしろがって押し進めてってほしい。
 時間が来たので、今日はここまで。
 もうしばらく、「こうしてほしい」的な基本プランを伝えていってから、どんどこ立ち稽古に入って行こうと思う。ていうか、演出家としての僕の仕事を一段落させたら、役者関根も戻ってくるだろう。
 次の稽古は、8/13(日)。

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 8月13日(日)

 稽古9回目。
 今日は広い稽古場で、少ない人数。
 稽古前のゲームがあわただしいのなんの。
 あんまりバタバタしてるのが、おかしくて、ケラケラ笑いながら、いろんなことをする。
 で、稽古。
 芝居の真ん中辺の、内藤と伊勢原(森川君と石関準)の場面をやってみる。
 森川君にやってもらう内藤という役は、「売れてる役者」ということなので、その「売れてるかんじ」をまずつかんでほしくて、劇中の座組の中で一番の若手の伊勢原との二人の場面を、芝居の流れを無視して、やってもらう。
 しかも、突然の立ち稽古。台本は持っててもらっていいんだけどね。
 この場面では10脚の椅子は、上手と下手に5脚ずつ分けて置かれる。前の場面とのつながりで、伊勢原が片づけてるところへ、内藤がやってくるという段取り。
 はじめて、ほぼ実寸に近い広さで稽古をしてみる。
 内藤の台詞のかかり具合がどんななのか? 素人な伊勢原とプロな内藤では、空間の押さえ方がどう違うのか? 細かく注文を出しながら、いろいろやってもらう。
 森川くんは、この間までSGM2000というユニットで「蒲田行進曲」をやってた(うちの「Nude」と同日程だったので、僕等は誰も見れてない。残念!)。彼の役は、大部屋俳優のヤス(映画では平田満がやってたよね)。
 今日の森川くんは、ナチュラルな演技で、内藤の心情も伝わってくるんだけど、話の聞き方がものすごく「丁寧」なので、もっといいかげんでもいい、プラス「銀ちゃんでやってみてくれる?」というダメを出してみる。もっと派手に、声の大きさも、「わざと張ってる」んじゃなくて、自然にのびのびと大きな声が出てる、というふうにしてほしいと。
 ほとんど初めて小返し的な稽古をしてみて、むちゃくちゃ葛藤してる内藤という役のベースはできたみたいだ。
 ともあれ、さりげない「スターっぽさ」は間違いなく森川くんの味で、なかなかいいかんじ。ていうかとっても「かわいい!!」。
 僕も負けてらんないわ(だけど、土俵が違うでしょ。あ、「土俵」ってやな言葉)。
 今日の稽古場で、役者衆がみんな、この日記を読んでることが判明。
 稽古場で言わなかったダメをこの日記で言うのはナシねと約束する。
 「じゃ、ダメだしはHP見てね。じゃ!」ってのはナシってこと(あたりまえだ)。
 連日の稽古で、僕がへばったら、いっこう氏と森川くんが、掲示板上で日記を書いてくれそうなので、それも楽しみ。よろしくね。
 次の稽古は、8/16(水)。

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劇団フライングステージ第18回公演「オープニング・ナイト」

2000年9月16日〜17日 東京芸術劇場 小ホール2



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