「ゴッホからの最後の手紙」
「gaku-GAY-kai 2000」
日 記

★12月後半★

  

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 12月17日(日)
 昨日、16日は「VOICE」の本番。今日は2日分の日記です。長いです。
 前日の15日の夜の稽古は、ぷれいす東京の事務所に泊まり込んで‥‥の予定だったんだけど、効果音の編集が間に合わなくて、稽古の後、始発で一度帰って、続きをやって、それで会場の四谷区民ホールへ。
 最後の稽古は、きっちり衣装を着て、小道具を持って、通してみた。
 劇中に登場する二人がそれぞれ買った「クリスマスプレゼント」も実物がある(当たり前だ)。
 荒くんは、くまのぬいぐるみ。最初はマフラーの予定だったんだけど、変更。ぷれいす東京の事務所で売ってるもので、こういうタグがついてる。「このテディベアは、タイランドのチェンマイとパヤオのPWA(AIDSと共に生きる人達)によって製作されています。彼女達の多くは母親で、同じAIDSでご主人や子供が亡くなっていたり、現地の厳しい経済状況の中、明日の生活にも不安を持ちながら生活しています。日本ではAIDSは、医療の飛躍的進歩により薬が行き渡り慢性疾患として生活できるようになってきています。彼女達はすべて、薬を飲んでいません。このテディベアの売上げは彼女達PWAが薬を飲んで生きる道を作るために使われています」。焦げ茶色で、手足が動く、とってもかわいらしいぬいぐるみだ。糸の刺繍でできてる鼻が大胆にふぞろいだったりして、なかなか味がある。マフラーなんかより、ずっと芝居の勝手がよさそうだ。
 僕は、オルゴール。東急ハンズで小ぶりのシンプルな「機械のみ」なやつを選んできた。ただ大きなぜんまいのネジがついていて、曲が流れてる間ずっとくるくるまわってる。ちなみに曲は「タイタニック」の「マイハートウィルゴーオン」。ちょいダサなかんじでチョイスした。
 僕等は、劇中で、それぞれ「自分用」に買ってたそれを、結局交換することになる。たまたま動かなくなったエレベーターで知り合った二人が、仲良くなるきっかけの品物。
 衣装をつけるとそれまでできてた動きができなかったりして、ちゃんとした動きはゲネプロの時にやろうということに。
 事務所だから、大声は出せないけど、実際の舞台でもピンマイクを使うので、声量の心配はあまりしない。距離も狭い部屋だから、エレベーターの実寸に近くて、いい感じ。
 金曜の朝も、この頃の風邪ひきモードで、「帰ってきて、つらかったら、すぐに寝て、早く起きる」というペースが、どんどんずれていって、2時に起きてしまって、そのまんまだったので、さすがに眠い。
 4時前までいろいろと稽古して、少しだけ横になる。とたんにグースカ寝てしまった。フローリングの床に衣装のコートを着たまんま横になったらそれっきり。自慢じゃないけど、僕はどこでも眠れる方だ。
 始発に乗って部屋に戻って、編集の続き。「さくさくやって一眠り」のつもりが、ホールのスタッフに渡す「きっかけ」入りの台本を作っていたら、もう出かける時間になってたんで、出発。
 寝不足な劇場入りは、なかなか「ナチュラルハイ」な気分でよかったな。
 ぷれいす東京の「VOICE」のお手伝いは、去年に続いて二度目。ホールスタッフの山田さんとも一年ぶりだ。
 集まってくれたスタッフも総勢二十数名。みんな、ほんとによく動いてくれた。
 ぷれいす東京の砂川さんも昨日まで風邪でダウンしてたのに、結局、全部を仕切ってくれた。
 僕の仕事は、舞台進行のお手伝い。もっとも、舞台袖には、小屋付きの舞台監督の山田さんがいてくれるので、主な仕事はリハーサルの進行。
 時間内=開場時間までにどうやって全部を終えるか。これが一番大事な仕事(だと思う)。
 去年は、朝から予定時間をオーバーするグループが続出でかなりカリカリしたんだけど、今年はどこのグループもしっかり努力してくれていて、とってもスムーズにリハーサルを終えることができた。感謝だ。
 僕と荒くんのリハーサルは、朝一でスタート。これが、まあ、大変だった。
 ピンマイクで芝居するのも初めてだし(すっごい昔にミュージカルの舞台で使ったことがあるけど)、ホールの大きさを相手にするのも初めてだし、なんだか「通し稽古」というより、「場当たり」の段階で終わった気分だった。で、二人して「これでできるんだろうか?」ってむちゃくちゃ心配になったんだけど、二人とも、やることがいっぱいで、もう練習する時間はない。
 二人で芝居の話ができたのは、本番が始まって、それぞれの仕事を人にまかせて、楽屋に降りてってから。荒くんは、遊んでる「チャラ男」の役なので、ヘアスプレーで茶髪に変身。これに結構時間がかかって、できた頃には、もうスタンバイの時間。
 「楽しくやろう」という話をして、「信頼してるから」と言って、舞台袖に‥‥。
 で、僕達の芝居は、無事に終わった。しょっぱなから音響のトラブルがあったりして、僕は舞台中央で客席に背中を向けたまましばらく立ちつくしてたんだけど、その間が「開き直る」余裕をくれたみたいだ。
 稽古場では誰もウケてくれる人がいなかったんで「これって、どうなの?」ってなセリフもきっちり笑ってもらえることができて、「楽しく」演じることができた。
 いっつも思うことだけど、芝居ってお客さんがいて初めて立ち上がるんだね。それまでできなかったことも、平気でできるようになるし。
 あ、芝居の中で僕と荒くんはキスをするんだけど、「本番でちゃんとやろう」ということで、稽古ではやってるふりしたり、なんとなくしてたりしてた。
 でも、本番ではばっちり。しかも、やめるきっかけになるエレベーターが動き出す音が出なかったりしたので(音響トラブル2)、その後の「お互いの服を脱がしていく」段取りも、いつもより進んでしまった。荒くんが僕のベルトをはずしたところでおしまいの筈が、終わらなくて、しょうがないから、荒くんのタンクトップの下に手を入れて、背中をまさぐったり‥‥いろいろしてた。で、これはほんとに「鳴らない」ってことがわかったんで、「あ、動いた!」って無理矢理セリフにして、服を着始める芝居を始めた。ふー。
 最後に、いったん外に出られた二人は、フロアーを間違えたんで、もう一度、エレベーターに。
 「また止まったら、続きができるね」なんて話を荒くんがして「そんな、しょっちゅう停電なんてするわけ‥‥」と僕が言ったところで「ガタン」という音がして暗転。僕「うっそー?」荒くん「ラッキー!」。この芝居のテーマ曲マッキーの「雪に願いを」のサビが流れ出して、おしまい。
 もう一度明るくなって、ご挨拶。この時もらった拍手は、ほんとうれしかった。もう「やった!」ってかんじ。
 荒くんも、すっごいいい芝居をしてた。この「本番の強さ」はすごいと思う。やっぱり舞台を知ってる人なんだと再認識。
 評判もなかなかよくってほっとする。僕の役は、HIVポジティブ、荒くんの役は、クラミジアが治ったばかり。そんな二人がエレベーターにとじこめられて、反発しながらも、いつしか仲直りして、ついには「ハッテンしよう」ってことになる。僕の役は「ふざけないでくれるかな、僕感染者なんだよ」って言う。でも、荒くんの役はこう言うんだ「感染者がセックスしちゃいけないって誰が決めたの? コンドームなら持ってるし、やろう」って。で、僕達はエレベーターの中でセックスしようと決める。今回の芝居はそういう話。
 荒くんが考えてくれた原案は、二人が出会って、和解するまでだった。でも、僕は、ぷれいす東京主催の「エイズ啓発イベント」なら劇中で「セイフ・セックス」しなきゃいけないと思って、そんな「続き」を思いついた。でも、そんな話がどう受け止められるか、実はとっても心配だった。ぷれいす東京の生島さんや砂川さんの了解は得ていたんだけど、会場に来てる、ほんとの感染者の人達はどう思うだろうかってことも含めて。
 でも、今回の「VOICE」で一番伝えたかったのは、PWAとして生きるってことはネガティブなことじゃない、閉じこもることなんかないってことだったんだ。うちの芝居じゃなかなかできない(ていうか、芝居の中で「僕が」セックスする話なんて「絶対に」できない)ことを、思い切ってやってみたかった。
 終演後、PWAとしてバリバリ活躍してるがんちゃんに「言いたいこと言ってもらってうれしかった」って言われて、ほっとする。途中で帰らなきゃならなかったPWAの人が受付で、「前半しか見てないけど、一番よかった」って言ってってくれたそうだ。
 よかった。もう二度とやらない芝居が、ちゃんと終われて、ほんとによかった。
 みんなどうもありがとう。
 で、今日の稽古の話です。ようやくです。
 今日は、森川くんが風邪でダウンしてしまったので、ダンスの稽古に切り替えた。
 僕も、ここ数日「VOICE」にかかりっきりで台本が進んでないので、ダンスのないのぐといわいわと高市氏には、「お休みしてもらっていいよ」と伝える。
 で、アルピーナさんを中心にダンスの稽古。
 「黒蜥蜴」になぜダンスが?って思われるかもしれないけど、今回の「贋作・黒蜥蜴」がもとにしてる、京マチ子主演版「黒蜥蜴」はミュージカルなんだよね。
 突然、踊り出す場面がいっぱい。 
 今回ぱくってしまうのは、黒蜥蜴が手柄を立てた手下の「ひな夫人」に「青い亀」っていう「由緒ある名前」と20カラットのサファイアを授ける場面。
 映画の中の音楽をそのまんま使って、振り付けも拝借してしまう。
 大体なんで突然踊り出すのか?ってな疑問もあるんだけどね。
 途中で入ってくるセリフもリップシンクで使ってしまう。
 あともう一つは、アルピーナさん演じる早苗とまっすーの雨宮、剥製の美男美女(よしおと早瀬くん)&紛れ込んでしまった青い亀(まみー)による「聖子ちゃんショー」の場面。
 映画の中では、熱烈に愛を語る早苗と雨宮の背景で剥製たちが「怪しく」(「妖しく」じゃないのよ)踊るんだけど、どうせならっていうことで、アルピーナさんお得意の聖子ちゃんで行ってしまう。
 一昨年の「新・シンデレラ」でも、「時間の国のアリス」をやってもらったしね。今年は「20th PARTY」。20世紀も終わりだし、いいんじゃないのってことで。その場面の台本がまだ上がらないうちから、まずは振り付けてしまう。
 アルピーナさんの指導で、どんどんいいかんじにきまってく。
 基本のリズムが「サンバ」なので、みんな「サンバステップ」で苦労してる。
 踊らない僕がしゃしゃり出てって、「サンバっていえば『お嫁サンバ』でしょ」とか言いながら、昔どっかのダンススタジオで習ったやり方をそのまんま伝える。でも、理屈じゃないからね、体が踊ってってくれれば、いいんだけど。
 でも、とにかく、終わりまで振り付け完了。
 青い亀の場面も、まみーと早瀬くん(このときは侏儒の役なので)の予習のおかげでばっちり。
 で、今日はおしまい。
 今度の稽古は水曜日。台本はきっと完成してるはず。
 明日は、会場の新宿文化センターでうち合わせ。その後は、「ジオラマ・マンボ・ガールズ」の練習。
 あと本番まで10日。いいかんじに、あたふたしてる。あ、衣装のこともそろそろ考えないとだわ。
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 12月20日(水)
 今日の稽古で「贋作・黒蜥蜴」の台本は完成!の予定だったんだけど、なんだかんだと進められなくて(夕べはまたダウンしてしまって、爆睡)、稽古場に持ってったのは、こないだの「東京タワー」の場面の直しを含めて10ページ。
 続く黒蜥蜴のアジトへ向かう船の上の場面とアジトに着いて、剥製の美男美女を早苗に見せる場面まで。あと、5ページでおしまいなんだけど。ほんと、もう少し。
 今日、持ってったところの読み合わせと立ち稽古。
 その前に、こないだ振り付けてもらった「ダンス」のおさらい。
 みんな大体覚えてるんだけど、まっすーがむちゃくちゃ「心細げ」に踊ってて、おかしかった。森川くんは爆笑してたね。でも、とってもいい味。ダンスとしては「?」なんだけど、場面としては、「これでもいいよね」ってなかんじ。
 新しい場面は、小林少年と明智の「エッチ」なからみがなかなかよくできて、おもしろくなった。どう「エッチ」かは、お楽しみにね。
 で、ソファの中の明智に黒蜥蜴が「恋の告白」をするお約束の場面。長セリフが照れくさいけど、なんとかやっつける。で、明智を水葬してしまう。
 アジトの場面も、さくさくと段取りを追っていく。
 早苗と雨宮をとじこめる「檻」をどうしようかと思ってたんだけど、思い切って、舞台から客席に突き落とした、そこが「檻」ってことに決定する。
 今回、この客席をあちこちで使うことになった。東京タワーから変装して降りてきた黒蜥蜴が岩瀬とぶつかる「地上」もここだし、その後、タクシーに乗って追跡っていう場面も、舞台のへりに腰掛けてやっちゃう。
 そうでもしないと場面が変わってかないからね。もう、どんどんやっちゃう。
 新しい場面をさらった後、岩瀬邸の場面をやってみる。
 今日は、よしおに岩瀬夫人が着る「着物」を着てもらう。まみーがこないだお母さんからもらってきた着物。ずいぶんたっぷり仕立ててあると思ったんだけど、よしおが着たら、さすがにつんつるてんだった。
 で、着物のさばきがあるので、着たまんま、通してみる。
 初め、意識しすぎて、ちょこまか歩くので、「そんなんじゃ先に進めないでしょ」とダメだししてやりなおし。
 でも、よしおはだんだん調子に乗ってきて、終わった頃には「何かつかんだ気がする!」なんて言ってた。目指してるのは、ドリフターズのいかりや長介の着物姿だ。問題は、髪型をどうするかだね。
 今日は、実際に使う音をあちこちで流してみた。岩瀬邸の前の「用心棒の歌」とか。オープニングの曲も聴いてみたら、やっぱり、芝居の雰囲気が変わった。そう、これなのよね。どんなにまじめにやっても、なんか力が抜けてっちゃうみたいな。
 黛敏郎作曲、三島由紀夫作詞のテーマ曲は、ほんとすごい。当日、開演前にきっちり流れるので、どうぞ聞いてみて下さいね。もう、ひどいから。
 てなわけで、今日はここまで。
 当日のタイムテーブルを決定して、出演者のみなさんにメールで送る。リハーサルの時間を決定しないといけない。
 まみーは衣装づくりでおおわらわ。
 僕は、黒蜥蜴のドレスを新調するつもりだったんだけど、昔着てたやつをアレンジして着てお茶を濁すことにした。とりあえず「着れた」んで、ほっとする。
 明日は、ジオマン(ジオラママンボガールズの略)の稽古。明後日こそ、台本完成だわ!
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 12月22日(金)
 ついに「贋作・黒蜥蜴」の台本が完成した。
 予定してた台本のページ数を1ページだけ超過して、最後に「幕」と打ち込んでおしまい。
 やった!
 コピーをとって稽古場に向かう。
 今日は、区の施設が年末対応になってて、延長ができないので、9時でおしまい。
 まず新しい場面をみんなで読み合わせて、すぐに立ってみる。
 原作通りのエンディングかと思いきや‥‥という、終わらせ方にしてみた。
 毎年恒例(?)の高市氏の「暫く、暫く!」というセリフと鳴り物入りの登場で、閉まりかけた幕がもう一度開いて‥‥というお話だ。
 もう何回使ってるだろうという歌舞伎の「勧進帳」の音をまた今回も使ってしまう。
 エンディングもまたしてもというかんじで、杉本彩の「ゴージャス」で終わる。
 マンネリなかんじを楽しんでしまおう。
 「20th party」の振りもずいぶん定着したみたいだ。
 あたふたと稽古を終えて帰ろうとしたら、ますだいっこうちゃんが遊びに来た。
 今日は9時まででおしまいなのと説明して、酒部活動になだれこみ。
 いっこうちゃんと森川くんといわいわと僕。
 久しぶりに稽古の後、飲む。台本が終わって、すぐ飲みに行くっていうのも何だかってかんじなんだけどね。
 「台本完成おめでとう」と乾杯して、楽しく盛り上がったんでした。
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 12月23日(土)
 昼間、舞台で使う衣装を取りに実家に帰る。
 コートやスーツやフェイクファーの布地などなど大荷物を抱えて、帰ってきて、そのまますぐに稽古場へ。
 今日は、ジャスミンさんが来てくれてる。
 「エヂプトの星を飾る台座」の役その他で出演してもらうことになってる。
 セリフはないんだけど、なかなかインパクトのある「登場の仕方」をする役だ。
 衣装を何点か持ってきてもらって、並べてもらって決める。
 音響の中村歩氏が来てくれて、音の打ち合わせ。もっとも、場面のブリッジなんか、まだどうしていいか決めかねてるところがたくさんある。
 大体の説明をして、あとは「じゃあ、当日ね」ということになった。
 gaku-GAY-kai全体の進行のお手伝いをしてくれる荒くんも来てくれてる。
 久しぶりにギャラリーがたくさんの稽古場になった。
 まず、「20th party」の練習から。
 まっすーが苦手だった「サンバ・ステップ」を克服してて、みんな感動。
 すごいよ。まっすー! やった、やった!
 続いて、頭から通して見ることにした。
 セリフや段取りがアバウトなところは山ほどあるんだけど、とりあえず「何分かかるか」を確認したくて、通してみた。
 途中の音楽を適当にはしょりながらだったけど、57分で終わる。
 うっそー! もっと長くなってるとばかり思ってた。
 今日、一番心配だったのは、通してみたら1時間15分くらいかかっちゃって、台本をどうカットしようか今晩考えてくるねってなもん。
 ちょっと休憩して、もう一度通してみる。
 さっきは、久しぶりな場面で忘れてる段取りがあったりしたんでもたついたんだけど、今度は落ちついてかなり「しっかり」と芝居をしてみた。
 で、きっと長くなってるよね‥‥と思ってたら、53分で終わってしまった。
 どういうこと?
 終わった瞬間、みんなが嬉しそうにしてる。
 そうなんだよね。上演時間60分以内っていうのは、当日のスケジュール的にも絶対おさえとかなきゃいけないことなんだもんね。
 これでセリフが入ればばっちりだと、みんなほっとしてるんだと思う。
 今回はあちこちでみんなが「変装」してるんだけど(そういう芝居だから)、その変装ぶりをわざといい加減にしてある。そんなの絶対バレバレでしょ!ってなふうに。
 駄菓子屋で売ってる「鼻眼鏡」とか、パーティグッズの「変装キット」とかそんなもののオンパレード。
 そして、そういった「安い変装道具」を一番使ってもらってるのが、明智役の森川くんだ。
 もう、ほんとに「安い」のでお楽しみに。僕は芝居しながら、笑ってしまって大変だった。
 あとは、早変わりの段取りの確認をしておけば、大丈夫、できてしまいそうだ。
 マジなセリフをどうちゃんと言うかってなことも、僕的には課題かもしれない。
 「黒蜥蜴」って芝居(オリジナル)は、大時代なメロドラマなんだけど、その「メロドラマ」な部分を「笑わないで」ちゃんとやらなきゃいけない場面が僕にはいくつかある。
 かなり照れくさいんだけど、まじめにやればやるほど「変なの」ってな風になればいい。
 もしくは、「変なんだけど、胸に迫る」みたいなものになればもっといい。
 明日も、2回通してみようと思う。
 全体の流れが見えれば、もっと楽しくやれるようになるだろう。
 ああ、でも、よかった。1時間でおさまって。
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 12月24日(日)
 稽古の前に「黒蜥蜴」の衣装の買い物をする。
 今回新しく購入しないといけないのは、早苗さんに変装するときのパジャマ。
 地元をあちこち探したんだけどないので、こういうときによく行く、渋谷の地下商店街、通称「しぶちか」に行ってみる。
 ここには、安くてけばけばしい衣装ばかりを専門に売ってるお店があって、僕はしょっちゅう利用してる(手袋が安いの!)。近所にも「安め」な店がいくつもあるので、うさんくさいパジャマがないかしらと物色。
 なんだけども、最初にいつもの「妖しいお店」で黒のベルベットのアンサンブルドレスが超お安く売ってるのを発見(あまりに安いので値段は秘密)。
 「試着してみます?」という優しい言葉に、上だけを着てみて、いいかんじだったので、即ゲット。
 ホテルの場面で、二の腕の刺青を見せるところをどうしようかと悩んでて、長袖のドレスを作るのは大変だし、ショールでごまかすのもな‥‥と思ってたので、ほんとラッキー。
 ここだけじゃなくて、この頃、この手のドレスを扱うお店に行くと、ほんとにいつも「試着してみます?」と聞かれる。
 前は、「衣装で使うんですけど、ちょっとサイズが見たいんで‥‥」とか言ってたんだけど、この頃は、何も言う前に、まず言われる。それって「バレバレ」ってこと?
 でも、かなり楽チンなのはたしか。
 ちなみに、もう一軒のいつ行ってもゲイフレンドリー、じゃないや「女装フレンドリー」な店は、新宿のマイシティの改札を出て、一番右側の奥にあるドレス屋さん。女の子の店員が、とっても親切。サイズもみんな大きめなので、かなりナイス。
 で、続いて、肝心のパジャマを探す。
 何軒か先の「ランジェリーショップ」で発見したパジャマ。長めの上着だけなんだけど、なかなかかわいらしい。値段も超お買い得。これもゲット。
 てなわけで、「見つかるかしら?」と思ってた買い物をさくさく済ませて、稽古までの時間、喫茶店でセリフの確認なんかができたのでした。
 で、今日の稽古は、まず、ジオラママンボガールズから。
 このユニットの説明はなかなかめんどくさいんだけど、簡単に言うと、とってもぬるい曲を妖しくリップシンクする三人組です。で、僕はそのうちの一人なの。
 今回の曲は、スリーキャッツの「黄色いさくらんぼ」と神楽坂浮子の「三味線フラフープ」、それから奥村チヨの「ウソでもいいから」の三曲。
 って言っても誰も知らないよね。まあ、そういう曲ばかりを選んでやってるんだけど。
 で、今回のテーマは「新体操」。ボールと輪とリボンを使ってみるという大胆な企画。
 去年のgaku-GAY-kaiで「南京玉すだれ」をやってしまったので、次は、新体操かなという思いつき。今年はシドニーオリンピックもあったしね。
 稽古は、例によってぬるいんだけど、予想外に運動量があって、へとへとになる。
 特にリボンは、6mの長さを扱うので、もう二の腕がぱんぱん。
 いいかげんな振りなんだけど、ちょっと派手目でいいかもしれない。
 で、7時になってフライングステージの面々が集まってきたので、ジオマン(ジオラママンボガールズの略)はそこまで。
 僕以外のジオマンのメンバー、奈須さんとじゅんちゃんは、「黒蜥蜴」を見てくことになった。
 今日は、全体の流れに慣れるために、二度続けて通してみることにした。
 さっき買った黒いドレスは、着てみたら、ついてる羽根がどんどん落ちて、床が「羽だらけ」になって掃除機をかける騒ぎに。さすがに安いだけのことはある。まあ、お店の人に「羽根が落ちるので、よくはたいてから着て下さいね」って言われてたんだけど。
 一回目の通しは、ちょっと流れてたかな。
 二度目の通しは、落ち着いて出来たと思う。
 どっちも、55分弱のタイムで終わる。タイム的にはかなり良好。
 僕は、今日もマジなセリフをどう言うかってことが大きいかな?
 もう少しいろいろたくらんでみよう。
 どう考えても、この「パロディ」芝居を、何点か引き締めてるポイントの一つが、僕の「黒蜥蜴」のマジメな思いみたいなもんなので、恥ずかしがらないでやらないとね。
 それにしても、東京タワーの場面の高市氏と森川くんの売店の夫婦はひどい。
 特に高市氏は、完全に僕を笑わそうとしてるし‥‥
 負けないわ。
 今日は高市氏の誕生日。
 さくっと家に帰って、遅い晩ご飯にスパゲティをゆでて、朝まみーが買ってきてくれたトップスのチョコレートケーキを食べる。
 夜遅くエスムラルダさんがうちに置いてあったドレスを引き取りがてら、打ち合わせに訪問。
 gaku-GAY-kaiのエスムラルダさんのショーの話や、こないだのVOICEの話をする。
 今回は、バブリーナさんが一曲出てくれるんだって。やったー! 楽しみ!!
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 12月26日(火)
 今日は、稽古場が「年末対応」で9時までしか使えない。
 アコカの公演が終わった郡司くんを迎えて、久しぶりの「宇宙ショー」の稽古に専念する。
 出演者が初めて全員揃ったことに、まず感動。
 いっこう氏は新国立の「ラジパケ」、郡司くんは「アコカ」、そして、僕はAGSの「ゴッホからの最後の手紙」と、それぞれあちこちに出ていて、全員が揃ったのはほとんど二ヶ月ぶり。
 郡司くんがいない間は、さすがにどうしようもないのでお休みしてたんだけど、僕やいっこう氏がいない間は、代役稽古をずっとしてた。
 早瀬くんやいわいわが、実にちゃんといない人間の振りを覚えてる。
 郡司くんに「育て方がいいから」って言われたんだけど、そんなふうに育てた覚えは全然ないんで、ほんとによくやってくれてると思う。うれしいわ。
 頭から順に「わからないところ」をさらっていって、通してみる。
 郡司くんが目指してる「きちっとした」ものには遠く及ばないけど、何とかなりそうなかんじ(あ、ごめんね。きちっとしたものにします!!)。
 ただ、この頃、全然動いてないので、一度通したら、へとへとになってしまった。
 二度は出来ないってかんじ。
 ていうか、途中から、もう息が上がってしまったよ。まったく、もう。
 こないだのジオマンの稽古以来の腰痛と風邪っぴきが、かなりひびいてるかもしれない。
 帰り、郡司くんや森川くん、そしていっこう氏らは、酒部活動に流れてったんだけど、僕は用心して帰宅部。
 でも、なんだかんだともうこんな時間だ。
 でも、黒蜥蜴のセリフ入れなくちゃ。あと、早変わりの衣装も。
 わー、どうしよう!!
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 12月27日(水)
 最後の稽古、
 昼間から衣装やら、音楽やらであたふたして、最高にてんぱってるかんじ。
 いつもながらってかんじなんだけどね。
 今日は、みんな衣装をつけてやってみようっていうことなので、かなりの大荷物になった。
 高市氏は、足りない買い物がてらということで、僕とまみーでタクることになった。
 その前に、明日のスケジュール表をコンビニでコピーと思って大荷物片手、もとい両手に向かいのローソンに行ったら、おじさんがとろとろコピっててキレそうになる。少し歩いてファミマに行ったら、ここでも、今風の男女がおしゃべりしながらだらだらと‥‥
 しょうがないので、あきらめてローソンに戻って、おじさんが終わるのをじっと待ってコピーを取った。
 で、ふと気づいたら紙袋のてっぺんに重ねて置いてた帽子のうちの一つがない。
 男装用のソフト帽じゃなくて、東京タワーの場面での女装用の帽子。ストンとしたシルエットでオストリッチが全体を覆ってて、僕達は「メーテル帽」と呼んでた。
 あわてて、通った道を探しまわったんだけど、全然ない。
 コンビニの店員さんに聞いてもわからない。多分、道ばたで落としたのを誰かが拾ってったのね。
 泣く泣くあきらめたけど、かなりへこむ。
 とってもチープなものばかりな僕の持ち物のなかでは、破格のお値段だったのよね。
 でも、これも「厄落としだわ」と言い聞かせて稽古場に向かう。
 で、稽古は、まず「贋作・黒蜥蜴」の通し。
 着替えをしながら通していったら、やっぱり少し伸びる。
 僕の早変わりの段取りはやっぱりかなり大変だ。
 で、続いて、「お星様になったリリィ」。
 こっちは、もうへとへとになる。
 二つ続けてるってのものあるけど、本番では、僕はこれに「ジオマン」が加わるんだもんね。
 クライマックス(?)のマンコ引きで、よしおの「はずす」段取りがうまくいかなくて、焦る。
 ほんとにだいじょぶなんだろうか?
 でも、これで稽古はおしまい。
 明日は本番だ。
 後半から来てくれた照明のおにさんと郡司くんは、道々照明の打ち合わせ。
 「贋作・黒蜥蜴」の照明は、もう「お任せ」してしまったので(舞台稽古見ながら適当に作ってってって)、さくさくと帰ってくる。
 ほんとに帽子どころじゃない。
 帰ってから、「ジオマン」と「贋作・黒蜥蜴」の音づくりにとりかかる。
 本番で使う、衣装とアクセサリーのチェック。
 大荷物をどんどんまとめて玄関に出して、音のチェックを最後にしたら、朝の5時。
 少し眠れそうでほっとする。
 いよいよ本番だ。
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 12月28日(木)
 「gaku-GAY-kai 2000」本番当日。
 高市氏とまみは、荷物と一緒にタクシーで、僕は電車で会場に向かう。
 で、さくさくと準備開始。
 舞台にリノを敷いて、おにさんを中心に照明を仕込んでいく。
 荒くんがとってもよく動いてくれて、僕は、きれいに何もやることがない。
 で、これ幸いと、ロビーでセリフの確認を延々させてもらってた。
 演出の仕事も音づくりも(これが一番大変だった)全部終わって、最後まで手つかず(!)でいたのが僕の芝居だ。ていうか、セリフの確認。今回の三島由紀夫「風」のセリフは、実は、一番抵抗のないしゃべり方で、これまでずっと「セリフを入れなきゃ!」てな努力はしてなかった。まあ、自分でも書いてるし、自信があったんでね。でも、去年の「新・浦島太郎」で、ほんとに大変な「真っ白」な状態になってしまった恐怖が忘れられないので、土壇場になって、地道な努力をしてみる。
 で、「大丈夫!」ってな感じになった頃に、表方を手伝ってくれる三枝嬢が来てくれて、お昼休み。
 照明の仕込みは、かなり遅れたんだけど、とにかく、「贋作・黒蜥蜴」を通しながら、明かりを作ってってもらうことにする。
 音響の中村歩さんとは、打ち合わせ済みなので、かなり安心。
 あとは、早変わりがうまくいくかどうか。
 で、やってみた。
 早変わりは、もう、ほんとに大変だった。
 まず、早苗さんに化ける時に、イヤリングが落ちた。
 続いて、男装。男装のスーツ姿の中は黒セーターにしたんだけど(昨日の稽古の結果ね)、それも大変だったので、「素肌にジャケット」で通すことに決定。靴もはきかえない。ずっとピンヒールで通すことにした(履いたまま着替えられたので)。
 だから、男装姿は、怪しい女装(?)みたいなかんじになった。胸元にはラインストーンが光ってるし。
 東京タワーの場面で、あっという間に、売店のおばさんに化けるのは、あらかじめコートの下に着込んでるんだけど、このときのおばさんルックを、その一つ前のアジトの場面のドレスのときから着込んでおくことにする。こうすれば安心。
 で、他の場面はほぼだいじょうぶ。
 早苗さんと小林少年が閉じこめられてる「ピンクのソファ」は、ピンクの全身タイツを着て椅子に座ってもらうんだけど、この椅子を、舞台横にあったキャスター付きの椅子を使わせてもらう。
 舞台から降りての段取り、ニセのエンディングの幕と音の段取りもうまくいって、「贋作・黒蜥蜴」のリハは終了。
 ここからはもう、何が何やらってかんじ。
 全体をしきってくれた荒くんにはほんとに感謝。
 それから、休みなしに次から次へと、様々なだしものの音と照明のきっかけを確認してってくれたおにさんと中村歩氏。
 マットーニャ・ウメさんが、全然来ないので、順番を替えながら、やってたら、連絡が。
 「作り物」に手間取ってるそうだ。一番最後でだいじょぶよと伝えて、どんどこ舞台稽古を進めていく。
 で、「お星様になったリリィ」。
 実際の舞台で、ちゃんと衣装を着て、小道具も持ってやってみる(あたりまえだ)。
 一回目は、かなり「荒れた」仕上がり。
 ポイントの、マンコ引きの場面もうまくいかなくて、かなり青くなる。
 郡司くんがよしおに徹底的な指導をして、照明のきっかけを確認してから、もう一度、通す。
 今度もうまくいかない。
 でも、もう時間切れ。稽古はおしまいだ。
 僕以外の面々は、ここで、メークにとりかかる。
 でも、僕には、ジオラママンボガールズがある。衣装に着替えて、かなりてんぱった状態で舞台に向かう。
 段取りを確認して、通させてもらって。さくっと終わる。
 「ジオマンはライブだ」(by 弦本淳)なので、本番に賭ける。もう、それしかない。
 気もそぞろなかんじで、どうやらメークを終えたら、開場時間。まみーに油性マジックで書いてもらった「黒蜥蜴」の刺青もバッチリ。全部のリハーサルは奇跡的に終わってる。
 ただし、マットーニャ・ウメさん以外は。
 ウメちゃんはまだ来ない。連絡もない。共演(?)の金子くんが心配そうにしてる。
 彼は「プロ」なので、ぶっつけ本番でやってもらうわということで、開場する。
 「遅れて来ると入れないかも」というご案内が功を奏して、開場してすぐ、客席はほぼ一杯の盛況。
 椅子席の前を桟敷にしたんだけど、椅子が足りなくて、追加するほどだった。
 で、18:00。開演時間。
 ウメちゃんはまだ来ないけど、始めてしまう。
 黒蜥蜴のテーマが流れる。
 アルピーナさんと一緒に舞台上にスタンバイ。
 この曲が終わると、開演だ。
 なのに‥‥
 幕が開かないで、もう一度曲が流れ始めた。
 照明のトラブルでもうちょっと待ってってことだったらしい。
 だったら、音楽始めないでってかんじ。卓は隣なんだから。
 結局、三回テーマを繰り返して、幕が開いた。
 たくさんの嬉しい拍手とともに芝居が始まった。
 芝居の出来は‥‥。
 いつも言うことだけども、お客さんと一緒に作ってくってかんじは、なんともいえずいい気持ちだ。
 さっきまで「できるんだろうか?」って思ってたことがじゃんじゃんできるようになるしね。
 ただ、着替えだけはとっても大変だった。
 リハの時にわかってたんだけど、下手の袖のスロープが結構長くて、その距離を「盗んで」いくのがなかなか大変だった。
 でも、予想通りのウケ方をしながら、快調に進んで、無事におしまい‥‥だったのに、僕は大ポカをやってしまった。
 大詰めのアジトの場面で、早苗と雨宮を檻に閉じこめて、黒蜥蜴は松吉と引っ込むんだけど、ここで、引っ込んですぐに「おとなしくしてなさい!」っていう蔭の声をやらなきゃいけなかった。でも、僕は、これをすっかり忘れて、楽屋に次の出の時に持って出る「スポーツ新聞」を取りに行ってしまった。
 見事な出トチ。
 のんびりと袖に戻ったら、荒くんが焦ってて、台本を指さされたんだけど、僕も何がなんだかわからなくて、全然違うところを読んでしまった。大ドジでした。
 でも、早苗役のアルピーナさんがうまくつないでてくれたそうなんだけど、かなり冷や汗。
 松田聖子の「20th party」をみんなで踊る場面があって、いよいよラスト。
 明智が生きているコトを知った黒蜥蜴は、毒を飲んで死ぬ。
 本当の「黒蜥蜴」だとこれがラスト。
 映画のエンディングの曲を持ってきて、かなりマジメに盛り上げる演出にした。
 音楽と一緒に幕がしまって‥‥というところで、大向こうから「しばらく! しばらーく!」という赤蜥蜴の声が‥‥という展開。
 「贋作」っていうひっくり返しの一番のポイント。
 で、僕は、指輪に仕込んだ毒を飲んで倒れた。青い亀役のまみが「黒蜥蜴様!」って言って駆け寄る。と、ここで音が始まってしまった。
 違うよ。音が始まるのは、僕が「よかったわ、あなたが生きていて」って言って、息絶えた後の「黒蜥蜴様!」なのに!
 でも、もうどうしようもない。今なら、「違うわ、音楽はまだ。ストップ!」って言えばよかったなんて考えられるんだけど、もうそれどころじゃなかったんで、どんどん音と芝居と幕の段取りはずれたまんま進んでってしまった。いつもならたっぷり言ってた最後のセリフを「さっさ」と言って(くやしかったわ!)何とか間に合わせようとしたんだけど、無駄な抵抗。
 リハーサルの時の「決まった!」って感じとはほど遠い、「ぬるい」エンディングに。
 でも、その後の、赤蜥蜴の登場からラストまでは、まあ、気持ちよくできたかんじ。
 ああ、よかった。
 みんなで舞台袖で「やったー」と抱き合って、すぐに僕等は「お星様になったリリィ」の準備。
 舞台は、5分の休憩をはさんで、「ポエトリー・リーディング」と「ヒラリンのガラ・コンサート」。
 「ポエトリー・リーディング」はますだいっこう氏と現役高校生のくわくん。制服姿がまぶしかったわ。
 「ヒラリンのガラ・コンサート」って、いったい何?と思ってたんだけど、みんな、ゲネを見てひっくり返った。
 ヒラリンは、ウルトラQの宇宙怪獣ガラモンの着ぐるみを作ってきて、それを着て、子供用の小さなピアノを弾いてくれたのよ!!
 彼は、去年もバルタン星人の着ぐるみを着て、エスムラルダさんと一緒に「モンスター」を踊ったし(しかも完璧に)、夏のパレードでは、ゴジラの着ぐるみを着て、あの暑い日を歩いてた。
 しかも、それらの全部が「手作り」なの!!
 今回のガラモンも「何で作ったの?」って聞いたら「スポンジ」っていう答えが‥‥。
 それはわかるけども、もう、絶句。
 なんでここまで一生懸命になれるわけ?ってなことでもう僕等はただただ拍手だった。
 子供のピアノに正座して向かうガラモンっていう姿も、なんだかよくってねえ。
 僕はリハーサルを見て、ほろっとしてしまった。
 ありがとう、ひらりん。
 話は戻って、ウメちゃんは相変わらず来ないので、順番を変更して、「お星様になったリリィ」がくりあがる。
 そんな連絡をあたふたしてたら、僕はひらりんに約束してた、ガラモンの解説のMCができなくなってしまった。この場を借りてお詫びします。
 この頃に、ウメちゃんが到着。
 段取りを話して、ラストのエスムラルダさんの前に出演してもらうことにする。よかった、間に合って。
 で、いよいよ、「お星様になったリリィ」。
 着替えの段取りとスタンバイを最終確認してスタート。
 順調に進んでる。
 マンコ引きの場面も、初めて成功。
 郡司くん扮するリリィを騎馬に載せて上手に引っ込んだパンパンたち(僕、森川くん、山縣くん)は抱き合って喜んだんでした。
 リリィを締め上げる場面で、僕はナイフを出して、リリィの陰毛を剃るんだけど(字で書くとやっぱりすごいね)、この時のナイフが出てこなくて、ちょっと段取りがずれる。郡司くん、ごめんなさい。
 でも、あとはラストまで一直線。
 警官への早変わりも何とかクリア。
 僕の最後の仕事は、爆死したリリィが抱えてたダイナマイトを受け取って下手にハケること。
 ‥‥無事に終わった。
 袖で座りこんで、ゆっくり閉まる幕を見てた。
 よーし。次はジオマンだ。いったん落としたメークをもう一度作り直す。
 舞台はまた5分の休憩をはさんで、「the First Class」のライブ。
 タックスノット友達のこたちゃんのユニットだ。
 バックでは仲良しの歌ちゃんが踊ってる。 
 僕は、メークをしながら楽屋で聞かせてもらう。
 客席の盛り上がりもいいかんじ。よかった、よかった。
 続いて、ジャスミンズ。
 仲良しのジャスミンさんのデビューショー。
 曲にちゃんと「ジャスミン」っていうフレーズが入ってる曲を使ってるのがイカす。
 続いて、「DKGB」。gaku-GAY-kaiおなじみの、サックスとケツワレダンス(ごめん)のコラボレーション。
 僕はその間、ジオマンの準備をして、袖にスタンバイ。
 「DKGB」が終了。幕が閉まる。
 僕達は、「道具」をスタンバイ。ボールと扇子(?)とリボンとフラフープ。さあ、始まりだ。
 zardの曲と共に幕が開いて、シドニーオリンピックの中継の声が聞こえてくる。「シドニーオリンピック、新体操団体‥‥」みたいな。
 で、シンクロの競技で選手がカウントを口ずさみながら体型を変えていくのをパロって、1から6までカウントして、ポーズを決めてから、「ヤーッ!」ってジャンプしたところで(シンクロでやってたでしょ、日本の団体の「空手」のときとか)、「黄色いさくらんぼ」が始まる。
 ボールと扇子を使った「黄色いさくらんぼ」が終わると、「高得点が出ました‥‥」みたいな解説の声が入る。ほんと安くてごめんなさい。
 で、「三味線フラフープ」。大体、ぼくたちの衣装にフラフープが入ってるんだけど、僕と弦本淳はさらにもう一つ持ってっていう、豪華版。ずっと上にフラフープを上げてるのがしんどかった。
 で、これもぬるく終わると、「稽古のときよりずっといいですね。手具の使い方も‥‥」みたいなナレーションが‥‥
 客席に笑われながら、最後の曲、奥村チヨの「ウソでもいいから」。6mのリボンを手に、もうぐるぐるぐるぐるってかんじ(よくわからない)。終わりの頃はもう、へとへとで、ランニングハイみたいになってしまってた。でも、思ってたより、リボンがきれいに舞ってくれて、ちょっと感動。
 で、エンディング。
 「よくやったっていう表情ですね。‥‥9.70。第一位です!」ていうナレーションのあと(また)、zardの曲のサビで盛り上がっておしまい。
 見てくれた人どうもありがとうございました。これだけ読んだ人、きっと何がなんだかわからないと思うんですけど、こういうことも、僕はやってるんです。
 ここまでで僕の出番はおしまい。
 続いては、マットーニャ・ウメショー。
 ウメちゃんは、屋台を引いてる「落ちぶれたユーミン」ってコンセプトで、ミニチュアの屋台をつくってきて(それでも、かなり大きい。しかも、明かりがつくの!)、初めは指人形でリップシンク。二曲目で、体全体をあらわして、ただただ、くるくる回りながらリップシンク。微動だにしないで回ってるしかけは、テレビの回転台。くるくる回してたのは、金子くんのお仕事。
 「ハイパー・激安ナイト」にふさわしい素敵なだしものだった。
 最後のエスムラルダさんは、お馴染みの清水ミチコの「酔いどれ女の流れ歌」に子ギャルドラァグ、バブリーナさんを迎えての「No More Tears(enough is inough)」(by バーブラ&ドナ・サマー)。それから、「魔笛」の「夜の女王のアリア」という豪華なラインナップ。
 全部が終わって、舞台上に全員集まって、エンディング。
 最後は、みんなで「来なさい、21世紀!」って叫んで幕っていう、これまた安い演出でおしまい。
 てなふうに終わった、「gaku-GAY-kai2000」。
 その後、どうなったかっていうと、お客さんたちに挨拶して、舞台と楽屋を片づけて、楽屋でスタッフ出演者の乾杯をして、撤収。
 一次会の「いろはにほへと」で楽しく盛り上がって、二次会で二丁目に繰り出したんだけど、このへんから、実は僕は記憶がありません。
 朝から何も食べてなかったりしたせいもあって、ほんとべろべろに酔っぱらってたみたい。
 知らない人にキスしまくってたっていうし、誰に会ったか、何を話したかも、かなり危ないし。
 この場を借りてお詫びいたしますです。
 でも、ほんと楽しく終われてよかった「gaku-GAY-kai2000」でした。
 出演者のみなさんには、ほんとに感謝の言葉もないです。でも、やっぱり言っとかないとね。
 ありがとうございました。ここでしか見られない、数々のパフォーマンスを繰り広げてもらえてほんとに嬉しいです。
 それから、年末の大忙しの中、来てくれたお客様方にも、感謝。
 来年は、日曜か土曜になんとか開催したいと思うので、どうぞよろしくお願いします。
 「ゴッホからの最後の手紙」「VOICE」、そして「gaku-GAY-kai2000」とずっと書いてきたこの日記も、これでおしまいです。
 いやはや、濃い3ヶ月でした。でも、なんて充実してたんだろうと、今更ながら「やったー!」ってな気持ちでいっぱいです。
 今年、僕は、春先の「新世紀版・ハムレット」、5月の「ゴッホからの最後の手紙」の札幌公演、7月の「Nude」、9月の「オープニング・ナイト」、11月の「ゴッホからの最後の手紙」の東京公演、12月の「VOICE」と「贋作・黒蜥蜴」と、全部で6本の舞台に立つことができました。
 どれもとっても勉強になった、とっても大事な舞台です。
 20世紀の最後の年を、こんなにやりたい放題で過ごせた僕は、なんて幸せものなんでしょう。
 もうじき、2001年4月のフライングステージの新作の準備が始まります。
 稽古は2月21日からなんですが、それまでにもなんだかんだといろんなことがありそうなので、日記はもう少し早く始まりそうです(ていうか、また書くのね)。どうぞお楽しみに。
 芝居のタイトルも、ついさっき決定したんですが、もう少し秘密にさせといて下さいね。
 では、また。
 握手。
 せきねしんいち
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