「Love Song」稽古日記
関根信一

●2月後半●

>>>次の日記へ>>>

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

 2001年2月17日(土)
.
 今日は顔合わせ。
 といっても、メインはダイレクトメールの発送作業。いつもながらね。
 夕方からみんなが三々五々やってくる。
 鳴海(鳴海宏基。かつての劇団員。主な舞台:「陽気な幽霊」「夜のとなり」)が久しぶりに来て、作業を手伝ってくれるという。感謝だ。BBSで「残業日記(?)」を展開中の水月アキラも来てくれた。お手伝いの荒くんも。感謝です。
 5時過ぎに、養成所の稽古で休みのノグ(野口清和)と、急に実家に帰ることになった客演の森川くんをのぞいて全員そろって、作業にとりかかる。
 今回のフライヤーはA4版なので、折る作業もやや大変なかんじ。
 宛名シール貼り、封入、封緘までの作業が終わったのは、9時近くになってから。
 はじめのうちは饒舌だったんだけど、最後の封筒の糊付けにとりかかる頃には、みんなただ黙々と作業に集中。
 出来上がったDMを数えて郵便局に持っていくハコに入れて、一段落。
 ようやく、顔合わせだ。
 と、その前に、せっかくみんな集まったので、HPのプロフを確認してもらう。
 よしお(吉岡亮夫)とまっすー(増田 馨)はパソコンを持ってないので、今回が初チェック。
 よしおの写真に「新・シンデレラ」でいじわるな姉:メアリーがシンデレラのガラスの靴じゃない、かつらを無理矢理かぶろうとして、ものすごい顔してるショットを追加。
 それから、水木アキラの「陽気な幽霊」での「眼鏡ドラァグ」写真を追加する。
 で、顔合わせ。
 フライングステージは、出演者全員が制作状況を把握することになってるので(予算とか、全部。客演の方だって例外じゃないんです)制作の高市から、こまごまとしたお金の話なんかがあって、それから、僕が「じゃあ、よろしく」と挨拶して、おしまい。「こんなもんにしたいと思ってます」というような話はしたんだけども、台本をドカンとみんなに配っちゃう!とか、「じゃ、軽く読んでみようか?」とか、そういうことはなし(別に今回が特別ってわけじゃなくてね。ほんとよ!!)。
 高円寺にみんな集まるときは、大体ここで「ご飯」なんだけど、今日は、昼間からやることがいっぱいだったので、なし。
 腹ぺこ組は、高円寺の街に出ていく。
 はずが、そろって、駅前の白木屋へ。
 瓶ビールで乾杯してから、バイトの男子たちの「レベルの高さ」でみんな盛り上がる。
 11時近くなって、お開き。
 水月アキラが持ってきてくれてたワインと伊香保土産の古酒をあてにして、部屋に戻り、二次会。
 でも、みんな終電で帰って、今度こそおしまい。
 僕は、その後、タメ録りしてた「アリーmyラブ」を見る。ああ、なんてうまく作ってあるんだろう(こないだまでの「マイノリティ」な人達の裁判は今いちだったけども)。
 ところが、ビリーが死んじゃった!! そんな!! アリーの幼なじみで今は同じ法律事務所の同輩で、奥さんと最近別れたばかりで、この頃幻覚ばかり見ちゃってたビリーが、実は脳腫瘍で(!)、明日手術って前の日の法廷で倒れて死んじゃった!!
 いいの、こんなことしちゃって? 役者さんのスケジュール?で無理矢理降りたかったとか、そんな理由‥‥のわけないよね。それにしても大胆。それにしても、泣かせてくれるじゃないの!!
 台本にとりかかってるときはいつでもそうなんだけど、この頃、やたら涙が出てしかたない。花粉症のせいかもしれないけど。
 でも、ちゃんとコンタクトを外して寝ました。
 あ、僕は最近、コンタクトレンズを購入したんですよ。初コンタクト。舞台やドラァグのときはとっても不便な思いをしてたんですが、ついにというかんじでゲット。
 髪も金髪にブリーチしてるし、かなりイメ・チェン(死語)してると思います。たぶん。
 「Love Song」では、どんなふうになってるか‥‥。
 それは、まだ秘密っていうか、未定です。

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

 2月21日(水)

 最初の稽古。
 なんだけども、とっても体調が悪かったので、基礎トレだけをして、早めに切り上げることにする。花粉症or風邪かってかんじ。目がしばしばして(コンタクトはもちろんつけられない)目頭が乾くし、頭痛がするから、花粉症かもしれないし、久しぶりにノドが痛いので、風邪かもしれない。
 僕は去年の夏くらいから、疲れて体調が悪くなってくると、左の耳だけ耳鳴りがして、そのうちに何も聞こえなくなるっていう、持病を持っちゃってるんだけど、今回も、なんかそれに近いかんじ。
 でも、それって、「台本がなかなか書けないことから来るストレス性なもの」だったりするのかしら? 一応、否定しておく。
 森川くんは、今日まで実家に帰っててお休み。義理のお兄様が亡くなられたそう。
 稽古を休まなきゃいけないことを森川くんはとっても恐縮してくれてた。
 でも、本番に重ならないでほんとによかった。
 身内の不幸があるたび、僕は悲しいけど、それでも、舞台の本番をうまく避けてくれてることに、心の中で感謝している。とっても疎遠だった人とも、ただ、それだけの理由で、なんだか近くなれたような気さえしてしまって。
 とにかく、関係者全員が何の事故もなく、初日を開けて、千秋楽を迎えられるってことは、ある種の奇跡だと思う。無事に、劇場にいられるってことだけでね。
 なんだか、井上ひさしさんの「きらめく星座」みたいだ。
 あの中の広告文案家(すまけいさんの役)の「人間は奇跡そのもの」っていうセリフはよかったなあ。
 今回は、日記を上から順に並べていくことにしました。
 まとめて読みやすいようにね。
 「今日の日記」までスクロールをしてもらわないといけないですけど、よろしくおねがいします。
 

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

 2月24日(土)

 稽古2回目。
 今日は全員が揃いました。
 森川くんも帰ってきて、制作の高市も登場。
 残業ばかりの水月も今日は休日出勤じゃないそうで「ギャラクシー・クエスト」を見てきたって。僕もすっごい見たい映画!(「リトル・ダンサー」もね)。
 よしおもやってきて、こないだから始めた「タイ舞踊」を踊って見せて(?)くれてる。
 稽古は、今日も基礎トレ中心。
 ごめんね、台本はまだ持っていけないの。
 いつものトレーニングをやってみる。
 ストレッチの後、部屋中を「すきまがないように意識しながら」歩いてみる。
 拍手を回して、しりとりをする。
 こういう普段のトレーニングは実は久しぶりだ。
 毎回、そうだよねって気がしないでもないけど、初日までの稽古期間の前半は、基礎トレを中心に、後半から初日前までは「それどころぢゃないのよ!」ってかんじで、どんどこ稽古をする(当たり前か?)。
 去年の(前世紀!)の最後の舞台は「贋作・黒蜥蜴」だったんだけど、初めのうちは、みんなでやってた基礎トレも最後の方はやっぱりそれどころじゃなくなったんだった。
 でも、チームワークづくりってことでは、とっても大事な過程だと思ってる。
 早苗さんをやってくれたアルピーナさんも、ずいぶん楽しんでってくれたみたいだし。
 今日は、久しぶりのトレーニングで、みんなのやりとりが微妙に、すかすかしてる気がする。
 もしくは、余分に力が入ってるみたいな。
 伝えるものって実は力じゃないんだと思う。
 伝えようと思って伝えても実は伝わってなかったり、だから難しいし、おもしろい。
 とりあえず、「あれ?」ってな身体と気持ちの問題をいろいろとほぐしてみるかんじだな。
 相変わらず、まっすーは「しりとりとんちき」で、「もんが!」とか言ってるし(「ももんが」って言いたかったらしい)。
 それから、背中を向けて一列に並んでるみんなに一人が声をかけて、「誰を呼んでるかあてて」っていうゲームをしてみる。
 声の方向性だとか距離感だとか、そんなテクニックの問題も見えてくるし、伝えるってことが人によってどう違うのか見えてきて、おもしろい。
 高市氏が「おい!」と呼んだら、後ろを向いて座ってたよしおがビクッとしたって。すごいよね(ていうか、こわい)。
 続いて、声じゃなくって「何かを送る」っていうのもやってみる。送るのは「念」なのかもしれないけど、これも結構当たるんだよね。
 向けられてない人も「この辺」ってなふうに感じてるし。
 これも人によって、アプローチのしかたが違ってて、新鮮!
 最後に、「お話聞かせて」の2人組バージョンをやってみる。
 これは、こないだの稽古でもやったんだけど、二人組であるテーマについて、ひたすらしゃべるというもの。
 いつもは何人かがチームになって、順にまわしていったんだけどね。
 今回のは、とっても、即興の漫才バトルみたいなかんじ。
 テーマもこないだは「花粉症」「恋愛」、今日は「貯金」だとかって、とっても日常的なもん。
 ただのおしゃべりでいいんだけど、とにかくこっちに向けて「二人」でしゃべってってもらう。
 どのくらい構えてしまうのか、どのくらい、一人でしゃべってしまうのか。
 ボケとつっこみを決めなくていいから、好きにやってちょうだいって言ってね。
 まっすーと早瀬くんがいきいきとしゃべってて意外なかんじ。
 いつも、二人ともわりと「朴訥(ぼくとつ)」だからね(種類は違うんだけど)。
 いつもしゃべってる大人たちが、わりと気負って重くなってたりして、それも発見だった。
 で、今日はここまで。
 次の稽古は、来週の水曜日。
 月の前半後半に分けてるこの日記ですが、次回でもう3月前半に入ります。
 ここしばらくは、週に2〜3回の稽古が続きます。
 日記の更新が遅れがちですが(二回とも!)、これからはさくさくアップしていきます。
 自分をあおるために、カウントダウンをすることにしました。
 初日まであと
47です。

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

 2月28日(水)

 稽古3回目。ていうか、2月最後の稽古日。
 今日も台本は持っていかない。
 基礎トレから、今日は「ボイス・トレーニング」の日になった。
 「しりとり」を僕たちはいつもやってるんだけど、そのしりとりを「高い声」や「低い声」でやってみたりしてる。
 そのとき、高い声を出そうとするとどうしても「しりとり」から注意がそれてしまう。
 同時にいくつもことをやるっていうのは、普段ひとりでにできてることなはずなのに、いざ「やってみようとする」となかなかできない。
 そんなことを「おもしろがりながらできるようになれたらいいな」っていう、そんなトレーニングだ。
 今日は「高い声はどうすると出るのか? 低い声は?」ってなことを、いろいろ試しながら遊んでみた。
 「どこに響かせるとどんな声が出るのか?」「どこに意識を集中すると?」ってなことをね。
 普段の会話では、ほんとに「変幻自在」な声なのに、いざセリフとして喋ろうとすると、どこか違くなってしまう。
 そうならないようにするためには、「芝居するってどういうことなのよ」ってことをまず考えるやり方もあるんだろうけども、今日はとりあえず「テクニカル(?)」な方面からああだこうだ試してみる。
 「低いけど細い声」と、「幅のある響きのいい声」の違いって何だろうとか。
 稽古場の壁の「演劇で利用ときは上履きに履き替えて下さい」という貼り紙の文句をテキストにして、いろいろやってみる。
 最後に、大学時代「能」をやってた荒くんに、「能って何?」ってことをいろいろ質問してそれについて話してもらう。
 それまでにも、「正座して声を出すとなんで違った声になるんだろう?」とかいうことをやってた流れなんだけどね‥‥。
 みんなの素朴な疑問に答えてもらった後、「葵上」の六条御息所が登場する場面の謡を聞かせてもらった。
 もう、全然違う。
 すごかった。
 みんなびっくりしてた。
 実は、荒くんが稽古に来てくれるようになってからずっと、僕はこういう機会をねらってたんだった。
 荒くんは、僕達の発声練習にもついてきてくれてるけど、やっぱり「始めたばっかり」ってかんじはしてた。
 でも、こうして「謡って(?)」もらうと、もう全然違う。
 声の出方とか、身体のあり方とか、そういうものが全部。
 かっこよかったよ。うん。ほんとに。
 今度、みんなでやってみようと思うので、その時はよろしくねとお願いした。
 で、今日の稽古はここでおしまい。
 もう2月もおしまいですね。
 次回からは全員そろって、ちゃんとした稽古を始める予定です。
 初日まであと
43

●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●

>>>次の日記へ>>>