劇団フライングステージ 第27回公演
ヤクソク
約 束

2004年11月3日(水祝)〜7日(日)

新宿 シアターモリエール
TEL 03-3354-6568
JR新宿駅東口または南口徒歩5分
東京都新宿区新宿3-33-10 モリエールビル2F

料金]前売・予約 3,000円/当日3,200円/ペアチケット5,500円(前売・予約のみ)

    ★日時指定・全席自由
    ★開場は開演の40分前です。
    ★上演時間は100分を予定しています。
    ★当日券は開場と同時に発売します。
    ★前売開始 9月27日(月)
 [作・演出] 関根信一
   [出演] 石関 準・岩瀬あき子・樺澤 良・関根信一
        西田夏奈子・野口聖員・早瀬知之・ますだいっこう
   [照明] 福田さやか
   [美術] 笹原千寿
   [音響] 樋口亜弓
   [衣装] 石関 準 
 [宣伝美術] HIROYUKI
 [写真撮影] 山口規子 
 [舞台監督] 笹原千寿
   [制作] 高市梅莟・荒 俊樹
   [協力] 小林高朗・水月アキラ・三枝 黎・宇田誠之
        井上健一・細川陽規・増田 馨
石関 準
ISHIZEKI JUN
岩瀬あき子
IWASE AKIKO
樺澤 良
KAZAWA RYO
関根信一
SEKINE SHINICHI
西田夏奈子
NISHIDA KANAKO
野口聖員
NOGUCHI KIYOKAZU
早瀬知之
HAYASE TOMOYUKI
ますだいっこう
MASUDA IKKO
 携帯電話の普及率は60%を超えているそうだ。街から公衆電話がどんどんなくなって、電話はもはや一人が一つずつ(もしくはそれ以上)持ち歩くものになっている。待ち合わせのときの便利さはかつてとはくらべものにならない。ちょっと遅くなる、急に都合が悪くなった時でも連絡がすぐできる。いつまでも来ない相手を待って、イライラ時間を過ごすこともなくなった。でも、ふと思う。待ち合わせの約束って、もともとは一度決めたら、そうそう変更できないのが普通だったんじゃないだろうか? どんどん便利になっていくなか、僕たちの感覚はどこかが麻痺していってるのかもしれない。
 去年、おもしろいバイトをした。簡単なパソコン入力という仕事内容と、融通の利くスケジュールが可能ということで、やってみようと思ったその仕事は、実は、携帯電話の出会い系サイトに女性のフリをして書き込みをするというものだった。「役者さんだったら、おもしろいんじゃないですか」と言われて、やってみたのだけれど、これがけっこう大変だった。言葉の上だけの女性を演じながら、男たちのむき出しの欲望を目の当たりにするのは、それなりにおもしろかった。ただ、彼らの「いつ会える?」という質問に応えなければならないのだ。当たり前だが、会えるわけがない。そこで、会わずに済ませるためのウソを限りなくついていくことになる。元々がウソ八百の女性のフリから始まっているのだけれど、その「ウソのかたまり」なかんじは、ふだんから大うそつきを自認している僕にもちょっとつらいものがあった。インターネットを駆使して、行ったことのない場所でも、待ち合わせ場所に指定できる。東京にいながら、福岡でのデートの約束をして、「ごめんなさい。今日は都合がわるくなっちゃった」と明るく言い訳している自分をおもしろがりながら、それでも、やや空恐ろしくなってきたりもしたのだった。
 というわけで、今回の「約束」は、そのまんま、このときの経験を生かしてみようと思った芝居です。舞台は、出会い系サイトを運営している会社の休憩室。なぜかゲイばっかりが働いているその職場でのお話を考えてみました。
 ちなみに、僕は、その頃書いていた台本のあまりの書けなさから、バイトどころではなくなり、一日行っただけで、その仕事をやめてしまいました。「しばらく続けます」という約束を破って。バイト代は、まだもらってません。(関根信一)

 ごあいさつ(当日パンフレットより)
 今年に入って、三本目の新作です。一本毎に「今度はどんな新しいことをしてみようか」といつも考えるのですが、今回は久し振りに「大人数が登場するものを書いてみよう」という目標を考えてみました。
 8人という登場人物は、フライングステージのいつもの公演よりほんの少し多いだけなのですが、これまで僕が書いてこなかったキャラクターを登場させてみようとも考えました。
 初めて出演いただく俳優さんたちとの出会いも、そんな思いつきをわくわく加速させてくれました。
 台本を書きながら考えたのは、僕はこれまで、自分が知っている人のことしか書いてなかったんだなということでした。
 昔書いた台本は、登場人物のすべてが僕の分身のようですし、ゲイばっかりが登場するお話では僕の気持ちをいろいろに反映しながら、人々が右往左往しています。
 今回の「約束」を書きながら、久し振りに「この人はどんな気持でいるんだろう」ということを考えました。役割または記号として登場するのではない人物を描くというのは、劇作家としては当たり前のことなのかもしれませんが、僕は、今回、初めてそんな「壁」にぶつかったような気がしています。
 演劇というのは「想像する力」による芸術だと思っています。舞台上で繰り広げられる物語は、もちろん現実ではありません。それを承知の上で、作り手も観客も、現実以上の真実をそこに見いだそうとします。
 台本を書き、稽古をしながら、その「想像する力」は「思いやる心」なのではないかといふうに思えてきました。
 イラクでのいつまでも終わらない戦争、台風や地震により被害を受けた人たちの苦しみが、毎日のニュースで届きます。そんなテレビを見ながら、情報はどんどん僕の中に積もっていきます。
 まぎれもない現実なのに、どこか遠い出来事を、自分のこととして受け止めるのにはどうしたらいいか。それは、僕には、演劇とはとても近い次元のお話のように思えてきた、そんな芝居づくりの過程でした。
 さて、「思いやる心」のことを考えながら作っていたはずのこの舞台ですが、例によって、多くのみなさんにたくさんのご心配をおかけしました。この場を借りてお礼とお詫びを申し上げます。
 本日はご来場ありがとうございました。
 最後までどうぞごゆっくりご覧下さい。

 関根信一 

「約 束」上演台本


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