ひまわり

関根信一

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<上演記録>
【初演】
 劇団フライングステージ第15回公演
 1999年9月7日(火)〜9月12日(日) 下北沢 OFF・OFFシアター
 作・演出 関根信一
 出演 石関 準・岩井智彦・入山直子・郡司明剛・関根信一・鳴海宏基
    ますだいっこう・増田 馨・水月アキラ・吉岡亮夫
 照明 おにいつみ・鬼 郁子
 音響  中村 歩
 宣伝美術 HIROYUKI
 協力 三枝 黎・弦本 淳・KICK OUT
 制作 高市梅莟
【再演予定】
 劇団フライングステージ第20回公演
 2001年8月30日(木)〜9月2日(日) 下北沢 駅前劇場
 


【フライヤーより】

 毎回、いろんな映画のタイトルその他をちゃっかり拝借しているフライングステージですが、そういつもいつもうまくいくわけではありません。
 あんまり新しい映画は「いかにも」というかんじですし、本当に大好きでしょっちゅうビデオで見てるのはあまりにストレートでちょっと使いにくい(「欲望という名の電車」とか「黒蜥蜴(京マチ子主演版)」とかね)。これまで見てきた映画のストックだってすぐに底をついてしまって、結局、僕は、レンタルビデオショップでビデオの背タイトルを眺めてウロウロするということになります(いいのか、そんなんで!)。
 そうして、今回、拝借することにしたのは、「男はつらいよ」の「寅さん」の世界(!)「男はつらいよ」を「ゲイ」のお話に置き換えて、コテコテの確信犯的ホームドラマをお目に掛けることにしました。
 ずっと家に寄りつかないお兄ちゃんが実はゲイで、たまに帰って来てみると、妹には結婚話が進んでいる。おじちゃんとおばちゃんは相変わらず口うるさくて、隣のタコ社長も元気一杯。そして、下町の平凡な毎日がお兄ちゃんが帰ってきたことでめちゃくちゃになってしまう。
 寅さんの「帰れなさ」「帰らなさ」は何故なんだろう? ゲイは「家族」や「ご近所」と共存できるのか? なんだか小難しいテーマかもしれませんが、これを「吉本新喜劇」や「渡る世間は鬼ばかり」、とにかく、ああいうお約束の世界のパロディで思い切り笑い飛ばしてしまいます。
 タイトルは、一瞬「ゲイはつらいのよ」にしようかと思ったのですが、やっぱりやめて、「ひまわり」にしました。TUBEの新曲とは関係ありません。ソフィア・ローレンの有名な映画とも、もちろん全然関係ありません(今のところは)。
 上演時間は90分(絶対に!)。ウチでビデオを見るような、思いつきで映画館に入ってしまうような、そんな軽い気持ちで観に来て下さい。
                                    関根信一 

  

【当日パンフレットより】

ご 挨 拶  関根信一

 この当日パンフを作るにあたり、「ふるさと」という言葉を英語でかっこよく言ってみたくなって、いろいろ調べてみたのですが、よくわかりません。英語に詳しい友人に聞いたら、「英語には、そういう単語はないんだよ」と言われました。「祖国」または「故郷の町」のような言葉はあっても、「遠きにありて思うもの」的な「単語」はないと。そして、まあ、強いて言うなら、それは「HOME」じゃないかと言われました。僕は、自分の中にある「とても日本人的なもの」を見てしまったような気がしました。一人でかっこよくやっている毎日のはずなのに、どこかで一人じゃいられない自分に気が付いたときのどこか恥ずかしくて、面倒くさいかんじ。以来、「HOME」という言葉は、僕にそんな印象を与える言葉に変貌しました。
 フライングステージが、僕にとっての「HOME」であり、この劇場にいる時間が僕にとっての「ふるさと」もしくは「ふるさとを忘れさせてくれる」時間だよと言い切ってしまいたい。言い切ってしまえたら、どんなに楽でかっこいいか。
 今回の「ひまわり」はそんなふうにかっこよくなれない僕たちのお話です。
 「男はつらいよ」の寅さんに惹かれるのも、そんな「カッコ悪さ」ゆえなのだと気が付いたのは、台本を書き始めてずいぶんたった頃でしたが、結局そんな「カッコ悪さ」をとことん書いてしまうことになりました。
 と言っても、超マジメに「ゲイにとってのふるさと」を考えてみたりしたものではありません(当たり前だけど)。
 どうぞ、ごゆっくり最後までご覧下さい。できれば、大笑いしながら。
 本日はご来場、どうもありがとうございました。