「ひまわり」稽古日記
関根信一

8月前半

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 8月1日(水)

 もう8月だ。
 何だか信じられないね。
 今日もとっても少ない人数で稽古。
 よしおがタイ舞踊(来週末新宿の京王デパートのイベントで踊るらしい)、マミーがレインボーアート展、としくんは仕事。
 基礎トレから始めるんだけども、今日の稽古場は発声練習もなかなかしづらいし、今いち盛り上がらない。
 芝居の稽古も、出来る場面が、ほとんどない。
 僕といりーなの二人の場面と、早瀬くんといわいわの夜の庭の場面、それに、後半の僕と歌ちゃんの2人の場面。
 どう考えてもそのくらいしかできる場面がないんだよね。
 郡司君がいない間に、さくさく「貯金」をしておこうと思ったんだけど、なかなかそうもいかないみたいだねと、いっこうちゃんと話す。
 みんながやりたいのは全員が揃った場面の稽古なんだよね、というのが、よくわかる。
 なんとなく淋しいかんじ。しょうがないんだけども。
 歌ちゃんとの場面はほんとに芝居の最後のところなんだけど、いまのうちにやれておいてよかったかもしれない。
 歌ちゃんには、「ちゃんと僕に話しかけて」とお願いする。
 きっちりしゃべれてるんだけど、やりとりになかなかなっていかないかんじ。
 さくっと終わって、今日はおしまい。
 いっこうちゃんとの酒部活動。今日は、仕事の資料の受け渡しがあったりしたんで、途中ではぐれてしまい、ふっちーと歌ちゃんと3人のイレギュラーなかんじ。
 飲んでたのも、ビールじゃなくて缶チューハイということで。

 初日まで、あと28日!

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 8月2日(木)

 今日は郡司君をのぞく出演者が全員揃いました!
 稽古場が賑やかで、「やるぜ!」ってかんじのいい雰囲気。
 稽古場久し振りの高市氏も登場。制作のあれこれを伝えて帰っていきました。
 今日の基礎トレのしきりはまっすー。
 かっなりハードの筋トレで、みんな悲鳴をあげる。
 大人数基礎トレの後、まず劇中劇の中身を通してみる。
 こないだから、ずっとできないでいた「お茶の間」の場面だ。
 そこから、とにかく「劇中劇」=「ゲイはつらいのよ」のラストまでやってみる。
 立ち稽古は初めてだ。
 大人数があたふたするので、空間が人でいっぱいになる。
 立ちイチは最終的にはこまかく決めないといけないんだけど、今日は、まずやってみるということで。
 初演の記憶を頼りにしたり、勝手に新しくやってみたり、みんないろいろやってみる。
 その後、オープニングのやりとりを。
 誰に話しかけてるのかとか、誰の話を聞いてるのかとか、そんないろいろに気を付けてやってってもらう。
 僕とふっちーが話しているのに、どんどん割り込んでくるかんじ。
 こっちで話してるのに、全然違うことをしてて、でも、話だけはちゃんと聞いてるかんじ。
 みんなずいぶんのびのびしてきたみたいだ。
 まだみんな台本を持ってる。
 それで全然かまわないんだけど、初演の「できてしまってる記憶」があるから、今のまだできてないカラダとのギャップに、みんなとまどってる。
 ぼくもそうだ。
 セリフかんだり、違うこと言ったりとかね。
 つまり、ちゃんと人のセリフを聞いてないんだ。
 焦らないでゆっくり作っていこうと思う。
 初演の「ひまわり」は台本の遅れのせいもあって、ほとんど全員が毎回顔を出した2週間の連日の稽古でできてしまったような舞台だ。
 その勢いが間違いなくプラスになってた舞台だ。
 1時間30分で終わらせるという制限もそんな勢いに拍車をかけてた(もっとも、上演したら、1時間40分かかってたけど)。
 その勢いをどうやって作るか。
 いや、作っちゃいけないんだろうな。
 まずは、楽しみながらやっていくことだ。
 まだ、焦らないで大丈夫。
 
初日まで、あと27日!

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 8月4日(土)

 今日の稽古場のある阿佐谷は「七夕祭り」。
 商店街のみなさんが手作りした飾りが「これでもかっ!」とばかりにぶらさがってるアーケードを抜けて稽古場へ。
 今日は、郡司君以外の出演者が全員揃いました。
 基礎トレからはじめたんだけど、おとといのマッスーの筋トレ(スクワット)で足やら腰が痛い!という「苦情」が続出。
 今日はふっちー指導のおとなしいストレッチ。
 稽古は、一昨日に続いて、劇中劇を通してみました。
 そこから、1場の最後まで。といっても、そこまでやると全体の半分以上になってしまうのだけれど。
 やりとりがなりたってるかんじが楽しくなってきた。
 最後にオープニングのみんなでわいわいしゃべってるところをやってみて、今日はおしまい。
 稽古場の外に出て、差し入れでいただいた「缶ビール」をみんなで飲む。
 拡大「酒部」ってかんじ。
 このビールは、のぐとよしおとはやせくんが今度声の仕事をすることになった会社の方からの「暑中見舞い」。アイスノンで冷やして、稽古場に持ってきて、みんなに配布。残りは、酒部長いっこうさまへ。
 缶ビール片手に、としくんと歌ちゃんと阿佐谷の七夕祭りの下をしばらく歩く。
 歌ちゃんととしくんは「焼きイカ」を買い食い。
 歌ちゃんに呼ばれて振り返ったら、口からイカ足を「ブワーッ」とはみ出させてる!10本全部。もうクリオネが獲物取るときくらいおっかなかった。としちゃんは笑い転げてるし。子供じゃないんだから、まったく。
 しばらく忘れられない絵だわ。ほんと。

 初日まで、あと25日!

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 8月5日(日)

 今日は歌ちゃんがお休み。それ以外はみんなそろって、前半の稽古。
 その前にみんなにこの芝居の三重構造を意識してほしいと話す。
 普段のゲイナイトの場面、それから、お芝居の場面、実際に帰っていく現実の場面。
 初演は、何がなんだかわからないまんま勢いでやってしまったんだけど、今回はそのへんをちょっと意識してほしいとお願いする。
 ある程度デフォルメされた劇中劇の場面と、それ以外の場面の違いをそれぞれの役でどう出していくか考えてちょうだいと。
 で、お茶の間の場面をていねいにさらっていく。
 この場面は婚約者役のまっすーが実は難しいんだとわかる。
 ああだこうだとダメを出していく。
 デフォルメってわけじゃないんだけど、もっと正面向きの芝居をしてくれていいよと話す。
 で、続いて、全員集合の「殴り込み」の場面。
 おとなりのおばちゃんがどなりこんでくる。
 とにかく全員が舞台上にいるのでもう大変。
 つい団子状になってしまうのを、立ち位置を整理していった。
 今日のところはとりあえずこんなかんじかな。
 で、次に、実際に帰っていった「現実」の場面。
 すっごい「とびとび」の稽古で申し訳なかったかも。
 どんな違いがあるのか、どんなふうに違くしていっていいのかをわかってほしかったので。
 で、今日はおしまい。
 稽古場に遊びに来てくれた森川くん、いっこうちゃん、いわいわ、としくんと、パチモン養老の瀧で酒部活動。
 「七夕祭り」仕様で、小上がりがいつもより広くなってる。土間に板をはめて板の間にしてあって。
 今日は涼しい風の吹く、まさに夕涼みなかんじ。でも、やっぱりビールはおいしいね。
 
初日まで、あと24日!

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 8月7日(火)

 久し振りな荒くんも来て、今日は全員集合しました。
 制作の高市氏もチケットの受け渡しで顔を出したしね。
 郡司くんは、昨日が紀伊國屋ホール小屋入り。
 明日は初日! 小劇場の登竜門っていうか、あこがれの舞台、紀伊國屋ホール。
 僕も、学生の頃、つかこうへい事務所のチケットを取るのに徹夜なんかした思い出があります。
 舞台に立ったことはもちろんなくって、あえて言うなら、養成所時代、劇団の公演の仕込みで「ガラスの動物園」の建て込みのお手伝いをしたことがあるくらい。
 基礎トレもなんだかにぎやか。
 椅子取り鬼ごっこは、みんな慣れてきたせい&大人数なんで、一度に何人もが立ち上がってしまって、何が何やらわからなくなってしまう。
 ただのゲームなんだけど、誰が何をしようとしてるかってことをけっこう真剣にさぐらなくっちゃいけなくって、その「あうんの呼吸」をみんなで探してるかんじがなかなかおもしろい。
 で、今日の稽古は、全員揃ってるので、全員の場面をとにかくやってみました。
 今日が始めての稽古になる、後半のペットショップの場面。
 みんなが突然ペットショップの犬になる短いシーン。
 初演をなぞらなくていいから、好きにやって、と言ったら、なかなかおもしろくなった。
 まだ決めないで、いろいろやってみようと思う。
 それから、歌ちゃんと僕の二人の場面から、保健所にいる犬たちの場面。
 オープニングから劇中劇に入るまでを、さくさくとやってみる。
 OFF・OFFシアターで初演した舞台を、今回は駅前劇場で再演する。
 ただでさえ、間口の広さが全然違うんだけども、ついつい中央に集まってしまいがちになる。
 全体を広く見渡せてないと、なかなかうまくいかないんだよね。
 そんな「意識を拡げていく」ことがだんだんできるようになったかな。
 歌ちゃんとの場面の稽古をわりとちゃんとやってみる。
 僕たちもつい近寄りすぎてしまう。
 人と人の「テリトリー」ってあるじゃない。普通に話してて、ここから先には近寄らないみたいな。
 絶対的な距離っていうのは、舞台上でどう見えるかってことがあるから、かなり微妙で、まだ決めなくてもいいけど、僕と歌ちゃんの役のどっちが、そのテリトリーが広いか狭いか、そのテリトリーに踏み込んでしまうことに自覚があるか、ないか。そんな違いが、あるよね。という話をする。
 セリフのやりとりとは別に、そんな二人の距離についての駆け引きが、すっごくいろんなことを語っていく。そんな場面になるといいな。
 阿佐谷は今日までが七夕まつり。
 さすがに立秋っていうだけあって、ずいぶん涼しい風が吹いてる。
 それでも、酒部は活動!
 いっこうちゃん、としくん、それに僕は、駅のキオスクでゲット&ホーム飲みであっさりと。
 
初日まで、あと22日!

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 8月8日(水)

 今日も人数少ない淋しい稽古。
 広い稽古場でまずはいりーな指導の基礎トレ。
 さすが元体操部!な慣れたかんじの指導ぶり。
 それにしても小さいいりーなのとなりで、でっかい歌ちゃんがストレッチしてる姿は妙にほほえましくておかしい。今日の歌ちゃんは、ラグシャツっぽいTシャツに短パンをはいて、「一人ラグビー部」になってるし。
 いりーなの反対の隣は、まっすー。いりーなとまっすーは、「兄弟でしょ?」ってマジで聞かれたことがあるってくらい、顔が似てる。
 今日は、稽古前に、お互いのバイトの話を真剣にしてたけども、そんな姿はほんとに「兄妹」なかんじだった(あれ、「姉弟」だったっけ?)。
 フライングステージでは、「ひまわり」初演の以来、二人が「ヤギ」に似てることから(誰が言い出したかは不明)「ヤギーズ」と呼んでます。
 このあいだ「苦情」が噴出したまっすー伝授(?)のスクワットを、今日もやったんだけど、今日は、この前ほど辛くなかった。
 慣れてきたんだろうか? 鍛わってるんだろうか? たしかに、腹筋やっても、発声をやっても、今回の初めの頃とは違ったところに響いてるような気がする。
 週に数日のトレーニングだけど、続けてるとそれなりに効いてくるんだね。
 まあ、それは、普段どれだけ何もやってないかってことでもあるんだけども。
 基礎トレの後は、しりとりをどんどんレベルアップしながらやってみる。
 いつもは、あまり「テンポ」ってことを気にしないで、ちゃんと言葉が相手に届いてるかってことを主にやってるんだけど、今日は、ひたすら「テンポ」命。
 今テレビでやってる「セゾンカード」のCMみたいに(いろんな柔道の技が出てきて、淡々と紹介されてくやつ)、ずっと同じテンポで続けていく。
 しりとりって、まず何を言うかを考えなくっちゃ(or思いつかなきゃ)いけないし、その上に、誰に言うかってことを決めなくちゃいけない。
 だから、ふつうにのんきにやってるときは、考える間があってから次の人に渡していく。
 今日は、その「考える間」を「なし」にしてもらったんでした。
 ただ、考える時間が「ない」っていうのはムリなので、間隔はあけないんだけど、ひとりひとりは「ゆっくりしゃべる」ようにしてね。
 そうすると、最初の音、次の音って聞いてるうちに、自分が何を言えばいいか、思いつけるでしょ?
 でも、いずれにしろやってほしいのは、いくつものことを同時にすること。
 前の人のテンポをわかって、それと同じように次の人に渡す。
 同時に、自分が言うことを考える(or思いつく)。
 こんなことをいろいろとアレンジしながらやってみる。
 ずっと同じテンポから、相手の言葉の最後を喰い気味にしていったり(これはもっと考える時間が短いよね)、その「喰い加減」をどんどんエスカレートしていったり。
 最後には、どこまで早いテンポでしりとりができるかっていうのをやってみた。
 考えたり、つまったりしたら「負け」。
 まっすーを中心に、とんちきなミスが連発されて、かなりおかしかった。
 自分が早く言うためには、結局、次の人がすぐ出てこれるように、一人一人がはっきり伝えていくことなんだよと話す。
 チームワークの大切さみたいなノリがやりたかったんだけど、結局、かなり「闘い」なかんじになって、頭だけじゃなくって、カラダもへとへとになった。
 続いて、このところ「流行」の「椅子取りおに」。
 大人数でのごちゃごちゃとは違って、今日は、少ない人数で巧妙に動いてくのが、なかなかおもしろかった。
 このところずっとやってるせいか、みんなかなり上手になったんだけど、まだ同時に何人もが同じ椅子を目指して移動しちゃったりして、時々、わけのわからない混乱が生まれる。
 今日は稽古場が広いせいか、いつもよりあたふたしてたかもしれない。
 把握しなきゃ空間の大きさがほとんど「倍」なのでね。
 でも、うまく運んでるときの気持ち良さは格別だ。
 鬼はへとへとになって気の毒だけれども。
 休憩の後で、稽古。
 今日は、例によって、出来る場面が少ないので、2人の場面を中心にやっていく、少人数稽古のパターン。
 最初に、劇中劇が終わった後にいくつかセリフを追加して、その部分を読んでもらう。
 かなり説明的なセリフなんだけども、ちょっとわかりやすくしたかったのでね。
 その流れで、いっこうちゃんが演じるキャラについての話をいくつかさせてもらう。
 いっこうちゃんの役は、「きっつい」ドラァグクィーン「ベリンダさん」と劇中で演じる僕の母親的な役の「おばちゃん」、それから、現実の僕の「母親」の三役。プラス、劇中劇のやりなおしの場面では、また少し違った「おばちゃん」役をやってもらわないといけない。
 この「ひまわり」っていう芝居では、劇中劇の中と外、それから、ふるさとの人たちに犬たちっていうふうに、一人の役者が何役もやらないといけない。
 いっこうちゃんにやってもらう役々は、他の人たちのに比べて、全体が微妙につながってて、そのへんのやりようを「意識して変化させてってほしい」とお願いする。
 立ち稽古は、いりーなと僕の夜の美容室の場面から。
 何度か繰り返してるうちに、段取りじゃない、思ったことをちゃんとやっていこうというふうに、お互いに変わってった。
 二人とも、「再演」ってことで、自分がやらなきゃいけないことにとらわれてしまってて、その場でやりとりするってことを忘れてたんだと思う。
 場面が終わったときに、いりーなはとってもいい顔をしてた。きっと、僕もだと思うけど。なんだかほっとした。なんだこれでいいんだって気が付いたような気がしてね。
 二人で「この調子でいこう」って話しながら、言葉にならないところで「だいじょぶ、だいじょぶだよ!」ってやりとりができてたりして(笑)。「これからは毎回同じことやろうとしないで、その場で思ったことをやってくようにしよう」と話したんでした。
 続いて、僕と歌ちゃんの保健所の場面。
 歌ちゃんは、どうしても「セリフの言い方」で自分の気持ちを説明しようとしちゃうみたいなので、「自分の気持ちをお客さんに説明しようとしなくていいから、僕にちゃんと話しかけて」とお願いする。
 いつも僕がどこにいるか気にしててくれなきゃいけないし、僕にどうしてほしいのかってことを伝えるためにしゃべってほしいと話す。
 で、もう一度。
 今度は、やりとりが成り立ってく。
 「すごい、すごい!」と思いながら、明らかに僕の芝居もちゃんと「聞いて、話す」ようになってることに気が付く。
 なんだ、僕だって、今まで、ちゃんとやってなかったんじゃないかと反省。
 やりとりをきちんと続けていって、今までで一番、いいかんじに終えることができた。
 今日の稽古を最後に歌ちゃんは、アメリカへしばらく(約1週間)行ってしまう。
 ひとまず、前半戦最後の稽古で、「いける!」と思えるところまで行ってくれて、ほんとによかった。
 この調子でどんどん行ってくれると、最高にうれしい。
 歌ちゃんのでっかいカラダと二人きりの場面っていうのは、なんだかワクワクする(個人的趣味)。
 何より、僕が小さく見えるだろうし(錯覚)、かわいかったり、はかなかったりすると、もっと嬉しいな(希望的観測)。
 時間が来てしまったので、大慌てで大量の椅子と机を元に戻し、今日の稽古はおしまい。
 酒部のいっこうちゃんと僕は、こないだの反省から、みんなといったん別れて、さくさくと地元の酒屋さんへ直行。
 駅前で合流して、おしゃべりしつつ、ホーム飲み&車内飲み。
 今度の稽古から、郡司くんが合流。
 今週末には衣装合わせと音会わせをやってしまう。
 初日まであと3週間を切った。
 これからが、稽古は本調子。
 がんばろうね。

 初日まで、あと21日!

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 8月11日(土)

 今日から稽古に郡司くんが参加。
 入れ替わりに歌ちゃんがアメリカに行っちゃったんで、「全員集合」ってわけにはいかなかったんだけど、いよいよ「さあ、これから!!」ってかんじ。
 久し振りな郡司くんと、まずはいろいろ遊んでみる。
 ほんとうなら、「さあ、さくさく、芝居を固めていこう。ついてらっしゃい!」ってなるんだろうけど、そういうのは今日はちょっとやめておく。
 ストレッチから発声からゲームから、いつもの僕たちのノリにのっかってもらう。
 当たり前なんだけど、新しい仲間が入ると、遊びはぐんと面白くなる。
 いつものしりとり(体育会系)も、妙にみんなハイテンションになってしまって、おかしなとちりが山ほど出現。まっすーは「ゴアラ」とか言ってるし(「コアラ」と「ゴジラ」が混ざったらしい)。「げじげじ」の仲間(?)で「げりげり」っていうのもあったっけ。
 椅子取りおにでは、郡司くんは「姑息な手」をいっぱい使って、ぜーはー言いながら勝ち残ってました。絶対に膝を離して歩いちゃいけない鬼なはずなのに、ものすごい勢いで「走る」とかね。
 でも、一生懸命、遊んでくれてる姿が、とってもうれしかった。
 とまあ、そんなわけで、郡司くんには、昨日までの、紀伊國屋での絶対王様公演「謎の高橋」での「真剣勝負」とは真反対の、遊びばかりの稽古をして過ごしてもらっちゃいました。かなりのんきにね。
 郡司くんは、今朝まで打ち上げで、夕方からはもううちの芝居の稽古だ。
 ほんとに無理なスケジュールをお願いしてしまって感謝です。
 郡司くんにも、そして客演を快諾してくれた絶対王様のみなさんにも。
 これから千秋楽までの三週間。どうぞよろしくお願いいたしますです。
 続く稽古では、オープニングからの段取りを郡司くんをまじえてやってみる。
 みんな妙にはりきってて、いない歌ちゃんのセリフをみんなが「代わりに言ってくれようと」して、結局、わけがわからなくなってしまってた。「まず自分のせりふをしゃべろうよ」と言って、みんなで笑った。
 こういう稽古場が僕は好きだ。
 お互いがしのぎを削るのもいいけど、みんなで作ってくってかんじがする、どこかぬるい稽古場がね。
 たらたら遊んでるうちに、それが真剣な遊びに変わってくみたいなね。
 時間が来たので、今日はさくっと終わり。
 明日は、衣装のジャスミンさんと、音響の歩が来てくれる。
 昼間は稽古、夕方は衣装合わせ、夜は音を合わせながらとにかく通してみようと思うとみんなに伝える。
 稽古後半戦の開始だ。
 「酒部」は、いつものいっこうちゃん、としくん、いわいわ、僕に、郡司くんとよしおを加えた拡大版。
 「紀伊國屋お疲れさま!&これからよろしくね」で乾杯。
 パチモン「養老乃瀧」のおばちゃんとは完全に顔なじみになったね。

 初日まで、あと18日!

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 8月12日(日)

 2時開始の稽古前に、ふっちーに高円寺に寄ってもらって、衣装運びを手伝ってもらう。
 今回はとにかく衣装の点数が多い。 
 ほとんどの人が何役もをやるし、いろんな衣装にどんどん着替えてく。
 犬の「モグ」の着ぐるみもあるので、もう大変なことになってる。
 で、今日の稽古は、まずは、基礎トレから。
 タイ舞踊をイベントで踊ってるよしおの他は、キャストは全員集合(あ、よしおのタイ舞踊は、「新宿京王」じゃなくて「聖蹟桜ヶ丘京王デパート」でした。お詫びして訂正します)。
 昨日のお酒が残ってるわけじゃないけど、やっぱり日曜の午後の稽古場は、かなりまったりしてる。
 そのまったりしたカラダをじわじわと起こしていくことにする。
 いつもの基礎トレを終えて、昨日の続きの場面を当たっていく。
 今日は夜からとにかく通してみようという予定なので、本当なら、ここで終わりまでを一度読むとかするのがスジなんだろうけど、前半の郡司くんがらみのところを返していくことにする。
 郡司くんは、細かい芝居をいっぱいいっぱいして、本当ならからまなくていいモグにまでからんでみたり、「芝居したいのねぇ!」ってかんじ。
 としちゃんが「おじちゃん」用のハゲヅラを「3タイプ」も買ってきていて、次々にためしてみた。
 本当は2つの予定が「つい」3個買っちゃったんだって。
 まず一つ却下されて(なんだか、外人フェロモン系なワイルドなハゲヅラだったので)、「2つを日替わりでいいですか?」って話になったんだけど、芝居の相手をする方がたまらないので、1つに決めてもらう。もう、ただでさえ「飛び道具」なんだから、それ以上無茶はしないでほしいわ。
 休憩の後、衣装合わせ。
 ジャスミンさんが来てくれた。
 いっこうちゃんとまみーと僕のドラァグクィーンの衣装をまず決めていく。
 初演のままでもいいんだけども、僕の体型的な問題があって、この際!ということで全取っ替えにする。
 ジャスミンさんは、ほんとにイカすドレスをたくさん持ってきてくれて、結局、またものすごいドラァグさんたちが出来上がった。
 ドラァグさん以外はみんなゴーゴーボーイ系の役をやるんだけど、このへんは初演と同じ。問題は「2年経ってるけど、ちゃんと着れるかどうか?」。
 としちゃん、まっすー、いりーな、そして僕と、結果として、「みんな着れました」(よかった!!)
 ジャスミンさんには、「みんなお腹のこと心配して、大変ねぇ」と言われてしまう。
 劇中劇の中と外、いっこうちゃんのおばちゃんの衣装(なつかしい!)やら、早瀬くんの隣の猫「クロ」のセクシーな衣装(着ぐるみじゃないのよ!)やら、とにかく、今日いる全員の役の衣装を確認してみた。
 なんとか時間までに決まってほっとする。
 そして、7時過ぎから、「とにかく通してみる」。
 制作の高市氏に三枝黎嬢もきてくれた。
 音響の歩にMDで音出しをお願いして、場面場面で初演を同じ音を入れてもらう。
 郡司くんははじめての通し。
 僕たちも、通して読んだのは一度だけ。
 後半の約40分は、まだ一度も立ち稽古をしてない。
 でも、やってしまう。
 落ち着いて「読み合わせ」をするよりも、二年前に一度やってる芝居を、今またやるってことがどんなことなのかってことを、先にカラダでわかってみたかったから。
 「後半はただ読むだけでもいいから」って言ったんだけど、台本を持ったままの立ち稽古で終わりまで行った。
 約1時間30分。
 初演は1時間40分だったから、転換の時間をかなりはぶいた分、短くなってたかな。もっとも、みんな台本を持ってる分、かなりまいてたのもたしかだけど。
 「これからやらなきゃいけないこと」がたくさんたくさん見えてきて、明日からの稽古がおもしろくなりそうだ。
 ちょうど終わりの時間になったので、今日はここまで。
 ジャスミンさんと歩、それにいっこうちゃんと僕で、今日もパチモン「養老乃瀧」へ。
 打ち合わせもしつつ、飲み&ご飯。

 初日まで、あと17日!

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 8月13日(月)

 よしおととしくんとふっちーと歌ちゃんがいないので、広い稽古場が余計広々としてる。
 基礎トレをさくさくやってから稽古。
 今日もまた厳密に言えば「できるシーンがない」状態なんだけれども、郡司くんを中心にした「お茶の間」の場面をやってみる。
 短い場面なんだけど、その場にいるみんなが考えてることが微妙に違うので、その「気配り感」がちゃんと伝わるように、久し振りに細かく「演出」させてもらった。
 いないとしくんのかわりに早瀬くんに「おじちゃん」役をやってもらって、僕のいる位置にはまみーにいてもらって、僕は正面から見させてもらった。
 これで今日いる全員が参加した稽古状態になった。ちょっといいかんじ。
 僕がみんなを見ながらセリフを言ってくと、まみーがセリフに会わせて動いてくれて、まるで「ク・ナウカ」状態だ。もしくは人形の当て振りor人形劇のアテレコ。
 当たり前なんだけど、舞台にいる間中、何もしないでいる時間っていうのはないはずなんだけど、たとえば自分のセリフとセリフの間をどうつなごうかっていうのはけっこうむずかしいもんなんだねと改めて思った。台本に「セリフしか書いてない」せいもあって、その間のリアクションやら何やらがけっこう微妙なかんじだ。言葉にならない芝居ばかりなんだけど、いろいろやってってくれるとうれしいな。
 後半は、夜の庭のいわいわと早瀬くんと郡司くんと僕の場面。
 郡司くんは彼曰く「行儀の悪い芝居」をしてくれる。
 「何すんのよ!!」って一瞬焦ったんだけど、次にはすぐ「負けないわっ!」てな闘志(?)が湧いてきた(笑)。
 「やらなきゃいけないこと」だけをやってる稽古よりも、「やりたいこと」をどんどんやっちゃう稽古の方が、おもしろいし、いろんなものを生んでってくれそうだ。
 再演だけど新鮮な芝居にするためにも、真剣勝負で遊んでしまえる生きた稽古場にしていきたいと思う。
 稽古の後は、いっこう部長とほとんどなじみの酒屋経由駅でみんなと合流。
 その後僕はタックスノットへ。酒部活動続く。

 初日まで、あと16日!

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 8月14日(火)

 今日の稽古場は9時までしか使えない。
 世間様はお盆休みだけれども、みんな公演のための休みをとらなきゃいけないから、基本的には仕事(僕はお休みだけれども)。
 電車が空いてて、町が少しだけ静かでのんきで、それがなんだか「夏の終わり」感をかもしてる。
 大急ぎで基礎トレをして、さくさくと場面の稽古。
 今日は、となりのおばちゃんの殴り込みの場面。
 これまでわりと好きにやってたところなんだけど、今日は一人一人の動きをしっかり固めていった。
 この場面は「全く同じに」二度繰り返さないといけないので、どこで動くのか、どこで何を聞いてるのか、リアクションはどうするのか等々、きっちり決めていってもらう。
 続いて、その「二度目」の場面を。
 この場面はとにかくいっこうちゃん演じるおばちゃん=ベリンダさんが強烈な印象になるように、しっかり芝居をきめていってもらう。
 初演と今回の再演の一番大きな違いは、このあたりかもしれないね。
 初演はとにかく僕が演じてた主人公の思いみたいなもんだけが疾走してたけど、今回は、台本ではあまり書き込まれてない周辺のキャラクターをしっかりつくりあげてってる。
 その後、夜の庭の場面。
 「お行儀の悪い芝居」中の郡司くんの登場。
 いつもは僕が先に出て、続いて登場してもらうんだけども、今日は「先に出てくれる」とこそっとお願いしたら、「すっごい」先に出てって、セリフをしゃべてる最中のモグ=いわいわに「からみまくって」た。
 それもまあよしってかんじなんだけども、いわいわはかなり「怒ってた」かもね?
 その後の僕との二人の場面は、僕が郡司くんに何をしてもらってもだいじょうぶな心の準備ができてるので、いろいろやってみる稽古に。も少しいろいろやってみようかな?
 続いて、よしお演じるお隣の「剛ちゃん」の登場。
 初演の時は、男っぽい一辺倒だったんだけど、そのへんを微妙に動かしてってほしいと話す。
 何度か登場する場面の中で、その「男らしさ」をどう見せていくかってなことをね。
 あっという間に時間が来たので、今日はここまで。
 帰り道、お酒も売ってるミニストップで、僕といっこうちゃんは酒類調達。いりーなは、チョコナッツのアイスクリームを。
 てくてく歩きながら、ふと「花火したいよね」と話す。
 花火大会じゃなくて、線香花火とかその手の「ささやかな」やつ。
 ということで、日曜日の稽古の後、やっちゃおう!という話がまとまりました(僕といっこうちゃんで)。
 ちゃんと火消し用の水も用意して、稽古場の近くの緑道でさくさくとやってしまいます。
 夏の終わりのイベントだね。

 初日まで、あと15日!

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 8月15日(水)

 稽古の前にマミーと二人でいろいろな買い物に行く。
 まずは東急ハンズ新宿店。
 パネルに貼るミラーシート、キャスターを買う。
 さすがに夏休み&お盆ってかんじ。
 「夏休みの自由研究」とかに使えそうな素材がいっぱいだもんね。
 親子連れがいっぱいなのも納得。
 続いて、よしおの衣装の「作業着(?)」を探して、タックスノットの並びの「三光白衣」へ。
 美容室の「ケープ」がハンズで決められなかったので、ここで見つけられたらとも思ってね。
 が、「三光白衣」は「お盆休み」でした。
 さすがってかんじ(不明)。
 しょうがないので、二丁目に渡って「サカゼン」でお安い衣装をあれこれチェック。
 その後、二丁目のお店を何軒かまわって、よしお用の「セクシー」なタンクトップを探す。
 どこもイマイチなので、バスに乗って、原宿へ。
 この間、ジャスミンさんに連れてきてもらった「Beby Doll」というお店へ。
 この間、この店で僕は、「コルセット」を試着させてもらったんでした。
 ジャスミンさんの「ほんとに認識が変わるから!!」という言葉通り、それはもう「すっごい経験」でした。
 ミラノちゃんというお姉さんに「じゃ、柱に手をついて」と言われて、ぎゅうぎゅう締め上げられたんだけど、こんな僕のウェストがほんとにみるみる細く締め上げられてくんだから。
 まるで「風と共に去りぬ」のスカーレットとマミーの場面。
 人間の体ってすごいんだね。こんなに「融通がきく」なんて。
 ただ、僕のカラダはヴィヴィアン・リーとは違うんで、あんなにきれいに細くはなりませんでした。
 肋骨と腰骨の間が狭いんで、きれいにほっそりじゃなくて、広いまんまの胸回りと広い腰骨の間が、「急に」細くなってて、まるで、昔のアニメ「冒険少年シンドバッド」がマジックベルトを締めたみたいな、むちゃくちゃ「たくましい人」(?)がそこにはいたんでした(笑)。
 それでも、緊張感のないウエストをキープするには素晴らしい効果を発揮しそうなんで、かなり「欲しい!!」という衝動には駆られたんですが、とにかくお値段がお値段なので、要熟考ってかんじ。
 話がそれましたが、今日は、そこで、マミー用の薔薇の模様の網タイツとガーター。それに僕のつけまつげを買おうと思ったんでした。
 で、バスを降りてしばらく歩いて、お店の前へ。
 と、「水曜日は定休日」でした。
 またかっ!ってかんじ。
 完全に下調べが足りない僕たちのミスってかんじなんだけどね。
 「まったくぅ!」とか言って自分たちを責めながら、いっこうちゃんい教わった「Bodix」へ。
 ここは、イカすゴーゴーボーイ御用達のセクシーなウェアーのお店。
 店内はお店の人もお客さんもゲイ度120%ってかんじで嬉しい。
 何と今日はセール中!!
 ラッキー!ってなわけで、よしお用のタンクトップをゲット。お買い得!!
 ついでに、個人的に超派手なアロハをゲット。
 そこで、マミーと別れて、マミーはドラァグさんではくサンダルを探しに竹下通りへ。
 僕は、渋谷の「大中」でドラァグさん用の巨大な「お花」をゲット。
 で、稽古場へ。

 今日は、夜の庭の場面から。
 まずは、郡司くんのモグいじりをとりあえず固めてもらう。
 もう少し遊んでもらっててもいい気もするんだけど、ちょっと時間的に今日は決めて行く方向で行きたかったんでね。
 続いて登場するよしおのキャラクター。
 主人公健太郎のおさななじみ。
 同い年なんだけど、ずっと下町に暮らしてるっていう、ある種の「おやじくささ」がほしいと言ったら、かなりいい味に工夫してくれた。「ちょっとそれはどうよ?」って気がしないでもないけど、いいかんじ。もっともっといろいろやってってほしいね。
 それから、となりのおばちゃんが殴り込んでくる場面とその後のくり返しの場面を。
 その場にいる一人一人がどこを見てるのか、何を思ってるのかっていうのを、細かく決めていった。
 かなり段取りな稽古なんだけど、「一斉に振り返る」とかね。
 みんなが一斉にラフにしゃべり出して動き出すんだけど、一人だけ、ちょっと違う人がいるとかね。
 僕は完全に演出家なパートで稽古場にいる。
 こんなのは久し振りだ。ていうか、はじめてかもしれない。
 いつもは、作者と役者との兼業をしながら、ついでに(ごめん)演出もしてるかんじなんだけど、今回は、まず演出家としての仕事を全うしようと思ってる。
 ほんとは役者としてもちゃんと芝居をしながら、演出もパーフェクトっていうのがいいんだろうけど、なんだかうまくできない。
 新作の稽古のときは「それどころじゃない」かんじで「がんがん」作ってくんだけど、今回は、台本がある分、いろんなことをあれこれと考えながら芝居を立ち上げていってる気がする。
 それが、きちんと練られたいい芝居になってるのか、理屈っぽくて勢いのないいまいちな舞台になるのか、そこが一番の問題。ていうか、課題だね。
 どうぞいい結果に結びつきますように!
 僕はいつから役者関根として、この「ひまわり」の世界に生きるようになるんだろう?
 そのためには、まず演出家として、納得のいく世界を作り上げないといけないな。
 もう一息だ。

 初日まで、あと14日!

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