「Love Song」稽古日記
関根信一

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 3月17日(土)

 ぎりぎりまでiBookに向かって台本を書いていて(正確には「書こうとしていて」ね)、大急ぎで稽古場に向かうため、タクシーを奮発!
 高円寺から世田谷の下馬まで、環七を一直線のはずが、車中のラジオから「高円寺、上馬55分」なんて声が! 
 「何かあったのかな」と尋ねたら、「連休前だからね」との答え。
 マジで全然動かないので、運転手さんと話して、「裏道」を行ってもらうことにする。
 これがすごかった。
 もう全然わからないとこをずんずん進んでく。
 中野通りから幡ヶ谷の裏の方を通って、東北沢あたりを抜けて、池の上の駅をつっきり、三宿の交差点から下馬まで。
 初めのうちはiBookを広げて、なんだかんだとやってみようとしたんだけど、あまりな「急カーブ」の連続でギブアップ。
 窓の外を過ぎていく東京の町をただ眺めてました。
 ほとんどが「一度も通ったことのない道」で、こんなとこがあったんだと、新鮮なドライブでした。
 稽古場にようやく着いたら、みんなは読み合わせの最中。
 一昨日の続きのエチュードから始める。
 3人組の会話×2組。
 よしお、まっすー、いわいわ組と、森川くん、早瀬くん、まみー組。
 それぞれ、「学生時代の想い出」「ゴールデンウィーク」というテーマでしゃべってもらった後、「じゃ、今の話をもう一度、同じように再現してみて」と言ってみる。
 突然言われて、すぐやらなきゃならなかったよしお組がわりと再現できてて、考える(?)時間があったまみー組がわりと大変そうだった。
 一回目は自分の言葉だけど、もう一度繰り返すときには、全然違ったものになってる。
 その時の声は、身体はどうなってるんだろう。
 一回目を再現しようとする作業が、つまり「演技」ってことなんだよね。
 だとしたら、それって「演技」じゃないときとどう違うんだろうか?
 そんなことを、みんなであれこれ話す。
 一回目と二回目と、人によって、生き生きしてる方が違ってたりするのもおもしろい。
 てなことをしてたら、もうおしまいの時間。
 持ってった台本の追加部分は、読み合わせもしないで明日に回すことに。
 帰りに、新宿のツタヤによって、今回使いそうなCDを借りてくる。
 こないだ高円寺にもツタヤができたんだけど(アコムが変身したの)、CD、特に洋楽は「これだけ?」ってかんじなので。
 今、借りてきたCDをあれこれと聞きながら、これを書いてます。

 初日まであと26

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 3月18日(日)

 今日は朝から、「ファッションチャンネルニュース」というCATVの番組のナレーション録り(「MA」っていいます)。
 2001-2002秋冬のパリとミラノのメンズコレクションの回。中出順子さんというファッション評論家、プロの方と一緒に、コレクション=ファッションショーの解説をする。といっても、僕は「あいづち」をうってるだけみたいなもん(時々、「シロウトなつっこみ」を入れる役まわりも)。
 個人的には「ファッション」とは思い切り縁遠いところにいるんですが、この番組のおかげで、ずいぶん「耳年増(?)」になりました。
 21世紀になったばかりだっていうのに、ファッション界は、もう今年の秋から来年にかけてのトレンドを決めちゃってる。
 「ファッション」ってのは間違いなく、「ビジネス」なんだけども、その根底に、どうしてもトレンドにならないではいられない、世の中の流れみたいなものが反映してて、世の中や、時代なんてものの、縮図を見てるようなかんじです。
 一年先を予測するってことも、余計にそんなかんじがひとしお。
 そんなこんなで、僕はこのお仕事が結構気に入ってます。
 ナレーションの勉強も、すっかりさせていただいてるし。
 で、朝十時から昼の三時前までスタジオにいて、外に出たらば、きれいに晴れてて、思い切り「春の一日」な日曜日の午後でしたね。重い冬のコートを脱いで、るんるん歩いてしまいました。
 で、夜からは稽古。
 実は、昨日から、これまで書いたセリフと場面の整理をしてるんですが、今日の稽古にはどうしても間に合わなくて、基礎トレだけをして、おしまいにしてもらいました。ごめんなさい。
 直しているのは、一つは、全体の構成です。
 どこがどう変わるのかは、本番を見てもらうとして、芝居全体の「約束」のようなもの、時間の流れ方って言ったらいいのかな、そんなものを、もっとはっきりさせる作業をしてます。
 もう一つは、セリフとセリフの間の「距離」って言ったらいいかな、それを広げるって作業。おもしろい場面のいいセリフっていうのは、セリフとセリフの間が、きれいに「飛躍」してるんですよね。階段を一段抜かしで駆け上がるときみたいな、小気味いいかんじにね。
 これまで書いてきた台本は、どうも、そうなってないので‥‥。
 一段ずつていねいに上っちゃってるかんじなので。
 こういう「上り方」=「セリフの書き方」は、行き先がわかってなかったり、上ってる人がどんな人なのかよくわかってないときに、僕が陥ってしまう、よくないクセなんです。
 なので、今一度洗い直して、もう一度、さっさと上っていこうと思います。
 どんなお話か全然ご存じない方には、ただ「だいじょぶなの?」と心配をかけるだけの、余計な報告なんですけども、正直に書いておこうと思います。
 でも、今、このブラッシュアップをしておけば、もっともっとおもしろい芝居になるはずです。それは間違いないです。
 今日の稽古のこともお話ししましょう。
 昨日と同じエチュードをしました。
 三人の会話。プラス今日は、三人の会話にどんどん人が加わって六人になるというもの。
 後から加わった三人がそのうち別の話を始めるってことをやってほしかったんだけども、今日は、「初舞台の話」から「フライングステージに初めて来た時の話」をみんなでするエチュード(?)になってしまって、本来の目的を忘れて楽しくおしゃべりしちゃってましたね。僕も、楽しく聞かせてもらいました。
 そういえば、こうやって、みんなで話すってこともなかなかなかったんだと、気が付いたりして。
 まっすーが劇団員になる前に「出てみる?」と言って(僕が)出てもらった「秘密と嘘」の話。いわいわの初舞台は、稽古場発表会の「女優(正式には、モルナール作「夫の正体」)という芝居の「若い妻」の役で、すね毛を「貝印かみそり」で剃ったら、皮まで剃ってしまって血だらけになったこととか。早瀬くんは、「バディ」誌上の「劇団員募集のお知らせ」を見て、フライングステージの芝居なんか見たことないのに応募してきたこと。よしおが来た頃、一緒に来てたけど、そのうちにいなくなってしまった人達のこと。
 いつの間にか、かけがえのない仲間になってるけど、初めて会ったときは、こんなに長く深い(いろいろとね)お付き合いになるとは、全然思ってもみなかった。今更ながら不思議なかんじ。
 芝居の稽古とは違うところで、なんだか、いい稽古場でした。
 って、そんなことで、ほっこりしてる作者はやっぱり人でなしですね。
 がんばって台本書きます。
 まっすーは今日も変なことを言ってて(また!)、「宝くじ」の話をしようっていうエチュードの中で、宝くじの買い方を「『連番』と『とびとび』」って言ってた! 「とびとび」にはなかなか売ってくれないと思うよね。普通は「バラ」でしょ。

 初日まであと25

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 3月19日(月)

 修正版の台本は今日も間に合わず、昨日の続きのエチュードをする。
 今日は、冒頭のいわいわの独白のためのエチュード。
 まず自分の話をしてもらっって、それをもう一度繰り返してもらって、最後に「演じてもらう」ということをしました。
 セリフをただ一所懸命しゃべるだけじゃない、ちゃんとその場にいることができた上での一人ゼリフに、だんだんなって来た。いいかんじ。
 公言していた台本の完成予定日は20日。
 がんばるぞ!
 以下は台本書きのつれづれに、そのうちアップしようと思って書いてた一文です。日記を短く切り上げてしまったので、今日はこちらをどうぞ。
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 「Love Song」というタイトルなので、「一体どんな曲を使うの?」とよく聞かれるんですが、特に決めてません。
 ていうか、ストーリーと曲が直接つながってるわけではないので。
 いつもみたいに、いろんな曲がちょこちょこ出てくるだけです。
 ですが、僕が今とっても好きな「Love Song」をご紹介しましょう。
 「アリーmyラブ」というドラマの中で流れてた「You Belong To Me」という曲です(by ヴォンダ・シェパード)。
 タイトルでぴんとこなくても、曲を聴けば「ああ、これか」ってすぐわかる曲。スタンダードなんだと思います。
 もうずいぶん前にCDを買って勝手に訳したりしてたんで(ライナーノーツの訳は何だか今いちだったので。僕のはとっても「意訳&違訳」しちゃってます)、ここに載っけてしまいますね。「だから何?」ってかんじなんですけど‥‥。僕の「好き」のおすそわけです。
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  You Belong To Me

  See the pyramids along the Nile
  Watch the sunrise on a tropic isle
  Just remember, darling all the while
  You belong to me

  See the market place in old Algiers
  Send me photographs and souvenirs
  Just remember when a dream appears
  You belong to me

  I'll be so lonesome without you
  Maybe you'll be lonesome too
  And blue

  Fly the ocean in a silver plane
  See the jungle when it's wet with rain
  Just remember 'till you're home again
  You belong to me

.

  君は僕のもの

  ナイル川のほとりからピラミッドを見たら
  熱帯の小さな島で朝日を見たら
  僕のことを思い出してほしい
  だって、君は僕のもの

  アルジェリアの市場の古い街並みを見たら
  写真とお土産を送ってほしい
  そして、夢を見たら思い出して
  だって、君は僕のもの

  君がいないとなんて淋しいんだろう
  君もきっと淋しくて切ない気持ちになってるんだよね

  銀の翼の飛行機で海を渡って
  雨に煙るジャングルを見たら
  思い出してほしい
  うちに帰ってくるそのときまで
  君は僕のものだからね

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 僕は、この曲が入ってる「アリーmyラブ」のサントラと同じ曲を江利チエミ(!)が歌ってるのを交互に聞きながら、今回の台本を書いてます。

 初日まであと24

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 3月21日(水)

 修正版の台本を持っていく。
 さくっと読んで、立ち稽古。
 オープニングの全員登場の場面の動きを決定。
 いわいわには、「翻弄されてるのはあなただけど、場面を引っ張ってるのもあなただから」と話す。
 続いて、よしおといわいわの場面。
 久しぶりの立ち稽古で、なんだかしっくりいかない。修正版の台本は、もととそんなに変わってるわけじゃないんだけど。やや短くなってるくらいで。
 明日はこの続きを、どんどんやっていく。
 台本も、さくさく書いていってしまおう。
 いわいわは花粉症で鼻がむずむずしてるのか、今ひとつ集中しきれてないみたい。持ってた薬を渡す。
 僕も、昨日のぽかぽか陽気はほんとにつらかった。新しい薬を買ってきて、どうやら落ち着いたんだけど、薬飲んでると、患部(?)以外の他のどこかもなだめられてしまうみたいな気がしてくる。
 一所懸命「盛り上げ」つつ、台本に向かう。

 初日まであと22

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 3月22日(木)

 台本の続きを少しだけ持っていく。
 プラス、芝居全体の「場割表」。
 今回、いわいわは全ての場面に登場することになる。
 昨日の続きのオープニングの稽古。
 最初の場面のよしおといわいわ。
 二人で一つの椅子を取り合うやりとりがおもしろくなりそうだ。
 稽古場にgay walkerの取材で山縣くんが来てくれる。
 稽古の後、高円寺でインタビューを受ける。
 今回の「Love Song」の話と、フライングステージについてのいろいろを、あれこれと話す。
 来週にはアップされるそうなので、どうぞご覧下さい。
 今も、前売りの情報が載ってます。

 初日まであと21

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 3月24日(土)

 このところダウンしていた高市氏が稽古場に登場。
 養成所の卒業公演が終わったのぐも久しぶりに顔を出してくれた。
 稽古は、頭から順に。
 いわいわの長ゼリフの身体とセリフを切り離してほしくて、たくさんの椅子を動かしながら、しゃべってもらうことにする。
 一所懸命何かをしようとしながら語られるとき、言葉はなんて軽やかに生き生きとしてくるんだろう。
 何度も何度もいろんな注文を出して、その都度やらなきゃいけないことがどんどん増えて、それをクリアしていくうちに、様々なニュアンスが自然につたわってくるようになった。
 よしおとの場面は、明日もう一度ちゃんとやろう。
 高円寺に戻って、ずっと手つかずだった、僕の個人的なダイレクトメールの発送作業をする。
 見かねた高市氏とマミーに手伝ってもらって、約3時間半。
 印刷のご挨拶文に、一言(ほんとに)を添えて、350通をなんとか準備。
 ペンを握った右手は「棒になったよう」だ。
 3時過ぎ、ポストに三人揃って入れに行き、「バンザイ!」と叫ぶ。
 そして、部屋戻って、iBookに向かう。
 まだ、「DMが来ない‥‥」という方、一両日中には届くと思いますので‥‥
 ご予約、お待ちしてます。

 初日まであと19

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 3月25日(日)

 昼間はみんなに自主練習をしてもらって、僕は六時過ぎから稽古場へ。
 職場に泊まり込み続けてる水月アキラが久しぶりに遊びに来た(キスマークなんかつけちゃって、どういうこと?!)。
 まみーとよしおは、渋谷のセンター街でよしおが履くサンダルをゲットしてきた。OLの衣装は、カタログを見て、まみーが作ることに。
 いわいわは今日もとっても調子がいい。
 よしおとのからみでは、よしおがまだ「硬い」分、相手役として余裕があるかんじが、ちゃんとそこにいる人になってる。
 よしおは、gaku-GAY-kaiの「OKA−MAX」で使ったウィッグをかぶって、少しヒールのあるサンダルをはいて、「少し女装」してみたら、全然感じが変わった。
 オープニングの全員の動きを通して、よしおの2役の変貌ブリをたしかめる。
 僕といわいわの2場を軽くあたって、バーの場面3場。
 いわいわとマッスーとよしおとまみーがずっとしゃべってる。
 座ったままのミザンスを、アレンジして、酔っぱらったマッスーは床の上、よしおは少し離れて歩き回る。いわいわは椅子に座ったままというふうにしてみる。
 距離が変わって、やりとりがいきいきとしてきた。
 ここでも、いわいわはヌケヌケとそこにいる。
 ラストで早瀬くんが登場。今日は、ちょっと顔色が悪いかも。
 稽古場の床は、いつの間にかすっかり冷え切ってて、出番待ちばかりの森川くんには申し訳ないことをしました。ごめんなさい。
 月曜火曜と、最後の休みで、後はもうまっしぐら。
 勝負です。
 勝ちますとも。
 森川くん、待っててね。
 もちろん、みんなも。

 初日まであと18

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 3月28日(水)

 二日ぶりの稽古。
 書き進んだ場面を持って、稽古場へ。
 ようやく、森川くんが登場。
 お待たせしました。
 さくっと読んでもらって、細かく注文を出す。
 森川くんの役の「一人称」を「僕」から「俺」に変更してみる。
 相変わらずよしおの役、町田弘子は大活躍だ。
 これから先のお話を「前売り」して、今日はおしまい。
 続きは明日。
 
 稽古場まで急ぐタクシーの中で、運ちゃんに「野球が始まりましたね」と嬉しそうに話しかけられて閉口する。
 「だから何さ?」と口まで出かかったけど、飲み込む。
 いろんなテレビ番組がみんな野球一色になる=夏は、どうもうっとおしい。
 高校野球もとってもとおいかんじ(ちゃんと見ると、別な楽しみがありそうなんだけど)。
 今年の桜はやっぱり早いみたい。あちこちでどんどん咲いてる。
 稽古場の近くの緑道の桜は、もう七部咲きぐらいだろう。
 台本と稽古で、とてもじゃないがお花見に行けるような身体ではないので、花屋で吉野桜の枝を買ってきて、玄関に活けた。
 高市氏には「どこで盗んで来たの?」と言われたけど、ほんとそんなかんじ。
 台本書きの合間に、手軽なお花見だ。

 初日まであと15日!

 稽古の帰り、三軒茶屋から新玉川線に乗ったら、タックスノット友達のパチパチがいた。
 「やだ、びっくり!」といろいろ話す。仕事の帰りで、これから二丁目に出るところなんだって(ていうか、彼は二丁目のほとんど近所に住んでるから、帰り道なのね)。
 「『Love Song』早く見たいなあ」と言われて、泣きそうな気持ちになる。
 そんなふうに言ってくれるお客さんがいるのって、なんて嬉しいんだろう。

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 3月29日(木)

 今日は急に思い切り寒くなった。
 昼間台本を書きながら、久しぶりに毛布を引っぱり出して膝掛けにする。
 今日の稽古は、昨日の続きのバーの場面。
 早瀬くんの登場、森川くんの登場のクダリを整理する。
 カウンターに一列に座ってしゃべりまくるので、距離と位置関係が結構大変。
 とっても人のいいお兄さんで来てくれた森川くんに、例によって、「違くやってみてもらえる」とお願いしてみる。
 「『蒲田行進曲』だったら、ヤスじゃなくて、銀ちゃんでやって」と(去年もこんなお願いをした気がするけども)。
 新しく見せてくれた人は、ちょっとクセがあって、やや不機嫌で、でも、大人で、それまでバーのカウンターで話してたメンバーとは明らかに違う色味の人だった。
 「その人でお願いします」と言ったら、森川くんはちょっと戸惑ってたかもしれない。苦労をかけますが、よろしくお願いします。

 初日まであと14日!

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