陽気な幽霊
GAY SPIRIT

関根信一

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<上演記録>
【再演】劇団フライングステージ第21回公演
    東京レズビアン&ゲイパレード2002共催
    第9回池袋演劇祭グランプリ受賞作
    2002年6月11日(火)〜15日(土)
    東京ウィメンズプラザホール
[作・演出]関根信一
[出演]藤原 柾 ………… 石関 準(Aプロ)・早瀬知之(Bプロ)
    大橋健二 ………… 野口聖員(Aプロ)・増田 馨(Bプロ)
    田代 亘 ………… 鳴海宏基
    柾の母/吉田美智代/ゲイバーのママ/ドラァグクィーン …… 吉岡亮夫
    幽 霊  ………… 関根信一

[作・演出]関根信一
[照明]鬼いつみ松依
[音響]加藤 温
[衣装]石関 準
[宣伝美術]HIROYUKI
[ビデオ撮影]秋本徹也
[写真撮影]田村絵里
[協力]入山直子・井上健一・岩井智彦・郡司明剛・三枝 黎・ジャスミン
    弦本 淳・渕谷浩之・細川陽規・森川佳紀・山縣真矢
    TLGP2002実行委員会スタッフ
[制作]高市梅莟・荒 俊樹


【フライヤーより】

 ポケベルと幽霊

 「日本語は副詞から古くなる」と誰かが言っていましたが、芝居は「通信手段」から古くなるのかもしれません。
 「ロミオとジュリエット」の物語だって、電話があったら、あんな悲しい結末にはならなかったんですものね。
 今や全盛の携帯電話ですが、ほんの数年前まで、誰がこんな世の中を想像することができたでしょう?
 顔を知らない相手との初めての待ち合わせにもとまどうことはないし、時間にルーズな相手にいらいらすることも少なくなりました。困ったら、携帯に連絡をすればいいのですから。
 そんなダイレクトな通信手段が当たり前のようになったと思ったら、今度はメールというものが生まれてきました。
 こちらは、ダイレクトに話すことを微妙に回避しながら、いつでもどこでも、短いお手紙を送りつけるというスタイルです。
 いったい人と人とは、きっちり向き合いたいのかそうでないのか、どっちなんでしょうね? もしかしたら、どうしていいかわからずにどっちつかずでふらふらしている状態というのが、一番正直なところなのかもしれませんね。
 さて、今回再演する「陽気な幽霊」という芝居には、ポケベルが登場します。
 5年前の初演の時には、全然、おかしくなかったポケベルというものが、今やすっかり「時代遅れ」になってしまいました。
 「書き直した方がいいかな?」とも思ったのですが、そのままにしておくことにしました。
 携帯電話に連絡してくる幽霊というのはあまりに万能で元気がよすぎるような気がします。
 どっちつかずでふらふらしている幽霊が送ってくるポケベルのメッセージ。ちゃんと向き合いたいのに向き合いきれずにいるような、どことなく切ないかんじは、そのままに残して、今、このお話を再演してみようと思いました。
 お話の中に登場する「レズビアン&ゲイパレード」も東京では毎夏に開催されるおなじみのイベントになりました。
 ほんの数年間で、いろんなことがどんどん変わっていきます。
 それでも変わらないものは何なのでしょう? 久し振りの再演で、そんなことを確かめてみたい、そんな気がしています。(関根信一)

  

【当日パンフレットより】

 フライングステージも今年で旗揚げから十周年を迎えることができました。これも毎回、お忙しい中、劇場においでいただいているみなさまのおかげです。この場を借りてお礼を申し上げます。
 こうして、たくさんのお客様に来ていただけるようになったある意味「節目」の舞台が、この「陽気な幽霊」だったのだなと、今、しみじみ思い返しています。
 今回で5回目の「陽気な幽霊」です。OFF・OFFシアターでの初演、ジェルスホールでの再演、札幌公演、そして池袋演劇祭でグランプリをいただいての東京芸術劇場での再演。この最後の再演から、もう4年経ってしまいました。
 当たり前なのですが、4年も経てばいろいろなことが変わります。たくさんの人との出会いがあり、別れもありました。
 僕も、今年「東京レズビアン&ゲイパレード2002」の実行委員長をつとめることになりました。これも、何年か前には思いもよらないことでした。
 今回の公演の稽古中、僕のまわりの親しい方が何人もお亡くなりになりました。
 新宿2丁目のバー「クロノス」のマスター、クロちゃん。いつも辛辣な芝居の評や、大好きな映画の話をいっぱいしてくれました。「新宿2丁目レインボー祭り」等でお世話になっていたアキさんこと川口昭美さん。どうしてそんなに元気なの?と思うくらいのバイタリティあふれるあの笑顔をもう見ることはできません。
 前回の再演の時には、ダムタイプの古橋悌二さんに捧げた舞台を今回は、僕の勝手な思い入れで、このお二人に捧げたいと思います。
 この芝居をやりながら、僕は死ぬことが怖くなくなってきている自分に気がつくようになりました。そして、同時にまた生きることのおもしろさもまた、たっぷり感じるようになりました。
 今日、この劇場で、そしてまた、夏のパレードで、僕は、いまはもういないたくさんの大好きな人たちに、こう言いたいと思ってます。劇中の台詞のように。 「きっとだよ、きっとおいで。僕たち、待ってるから!」

 本日はご来場、ありがとうございました。最後まで、どうぞ、ごゆっくりご覧下さい。
                                           関根信一 

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