【再演版フライヤーより】
「蜘蛛女のキス」という芝居があります。ウィリアム・ハート主演で映画化もされてます。舞台は、軍事政権下のアルゼンチン、刑務所の同居房に閉じこめられた、政治犯とゲイの二人芝居。モリーナというゲイは、大の映画好きで、「映画なんて、けっ」と軽蔑している政治犯のバレンティンに、いろんな映画の話をします。そう、アラビアンナイトのシエラザードのように。全く相容れない二人が、それぞれの孤独と向き合いながら、次第に心を通わせていく。「映画」の話をしながら。
雨で中止になった小学校の体育の時間に聞かせてもらった物語。一人で留守番しているとき、ずっと聞いていたいろんな童話のLPレコード。今なら、テレビを見ていればあっという間に過ぎてしまう、何もすることがない宙ぶらりんの時間は、何かに変わって、今も心の底に沈んでいます。
「だから、芝居をしているんだよ」というわけではないと思いますが、「お話」を聞かせてもらうことは、今も大好きです。友達の噂話に、深夜の長電話、いつでもOKのEメール。聞かせてもらう話の中身より、話してくれる相手がそこにいてくれることが、実は何より嬉しかったりする。まあ、そこがテレビとは絶対に違うところですけどね。
今回の「美女と野獣」は、「蜘蛛女のキス」の設定をそっくりそのままいただいています(また!)。もっとも、登場する二人は、映画好きな「ドラァグクィーン」とオカマ嫌いの「チンピラ」に(安いわね)、語られる映画は、ロブ・ライナーの「ミザリー」にジョン・カサベデスの「グロリア」にしてみました。
初演の時は、タイトルを見て「児童劇だと思って見に来ちゃいました!」というお客さんがいましたが(でも、最後まで見てってくれたのね!)、ディズニーのアニメとも絢爛豪華なミュージカルとも、全然関係ありません(多分ね)。
ただでさえ饒舌なフライングステージの芝居のなかでも、これは極めつけのおしゃべりな芝居。思う存分「お話」を聞かせてあげます。チープ&ゴージャスなドラァグテイストもお楽しみに!(関根信一)
|