美女と野獣
Kiss changes everything?

関根信一

第1場 >> 第2場 >> 第3場・第4場 >> 第5場・第6場 >> 第7場 >> 第8場


<上演記録>
【初演】(第8回池袋演劇祭審査会特別賞受賞)
 1996年9月 東池袋 アートスペース・サンライズホール
 作 関根信一 演出 藤井冬生
 出演 グロリア:関根信一
    リュウジ:野口清和
 
【再演】
 1999年11月10日(水)〜14日(日) 新宿・タイニイアリス
 作・演出 関根信一
 出演 グロリア:関根信一
    リュウジ:野口清和(Aプロ)・中村 歩(Bプロ)
 照明 おにいつみ
 音響 笠山祥克
 衣装 ジャスミン・石関 準
 小道具 高津映画装飾株式会社
 宣伝美術 HIROYUKI
 写真撮影 山口規子
 舞台監督 笹原千寿
 協力 岩井智彦・三枝 黎・弦本 淳・早瀬知之・増田 馨・水月アキラ
    吉岡亮夫
 制作 高市梅莟
        


【再演版フライヤーより】

 「蜘蛛女のキス」という芝居があります。ウィリアム・ハート主演で映画化もされてます。舞台は、軍事政権下のアルゼンチン、刑務所の同居房に閉じこめられた、政治犯とゲイの二人芝居。モリーナというゲイは、大の映画好きで、「映画なんて、けっ」と軽蔑している政治犯のバレンティンに、いろんな映画の話をします。そう、アラビアンナイトのシエラザードのように。全く相容れない二人が、それぞれの孤独と向き合いながら、次第に心を通わせていく。「映画」の話をしながら。
 雨で中止になった小学校の体育の時間に聞かせてもらった物語。一人で留守番しているとき、ずっと聞いていたいろんな童話のLPレコード。今なら、テレビを見ていればあっという間に過ぎてしまう、何もすることがない宙ぶらりんの時間は、何かに変わって、今も心の底に沈んでいます。
 「だから、芝居をしているんだよ」というわけではないと思いますが、「お話」を聞かせてもらうことは、今も大好きです。友達の噂話に、深夜の長電話、いつでもOKのEメール。聞かせてもらう話の中身より、話してくれる相手がそこにいてくれることが、実は何より嬉しかったりする。まあ、そこがテレビとは絶対に違うところですけどね。
 今回の「美女と野獣」は、「蜘蛛女のキス」の設定をそっくりそのままいただいています(また!)。もっとも、登場する二人は、映画好きな「ドラァグクィーン」とオカマ嫌いの「チンピラ」に(安いわね)、語られる映画は、ロブ・ライナーの「ミザリー」にジョン・カサベデスの「グロリア」にしてみました。
 初演の時は、タイトルを見て「児童劇だと思って見に来ちゃいました!」というお客さんがいましたが(でも、最後まで見てってくれたのね!)、ディズニーのアニメとも絢爛豪華なミュージカルとも、全然関係ありません(多分ね)。
 ただでさえ饒舌なフライングステージの芝居のなかでも、これは極めつけのおしゃべりな芝居。思う存分「お話」を聞かせてあげます。チープ&ゴージャスなドラァグテイストもお楽しみに!(関根信一)
  

  

【再演版当日パンフレットより】

ご 挨 拶  関根信一

 この芝居を書いたのは、今から3年前のことです。
 マヌエル・プイグの「蜘蛛女のキス」を上演したいというところから全ては始まりました。早速、代理店に上演権の問い合わせをしたところ、どうしても許可が下りず、全然違う別の芝居を勧められ(「『お月様へようこそ』じゃだめですか?」なんて言われた。決まってるじゃない!)、あんまり悔しかったので、「じゃあ、自分で書いてやる!」と奮起してしまったのが、そもそものこの芝居の成り立ちです。今や、僕はもう既成の「ゲイの芝居」をそのまんまやってみようという気はほとんどないのですが、その頃は、まだまだ、いろんなことをやってみたい盛りだったのですね。
 そんなわけで、元々、既成の脚本の「いいセリフ」をちゃっかり拝借するのが、大好き(?)な僕の台本ですが、今回も、またまたいろんな芝居から様々なインスパイアを受けてできあがっています。オリジナルの「蜘蛛女のキス」はもとより、コクトーの「双頭の鷲」、泉 鏡花の「天守物語」、竹内銃一郎さんの「東京物語」、それにジェームズ・カークウッドの「追伸・猫は死にました」などなど、「一体どこが?!」と思われるかもしれませんが、この芝居を作る間、ずっと僕の頭の中には、そんな大好きな芝居の数々を「真似したい」そして「もっと面白い芝居を作りたい」という欲が渦を巻いていました。今でもその気持ちは変わりません。いい芝居を見るたびに、「僕ならどうやるか?」と、それこそ、いろんな妄想がムクムクと頭をもたげてきます。
 さて、そうして出来上がった、この「美女と野獣」。何とか書き上げて、上演を終え、池袋演劇祭では「審査会特別賞」をいただくことができました。そして、僕はまた一つ、「何でもやっていいんだよ!」と背中を押されたような気がしたのでした。そういう意味でも、この「美女と野獣」は僕にとって大きな意味を持つ芝居です。
 さて、オリジナルの「蜘蛛女のキス」では、ゲイのモリーナは、ラスト撃ち殺されてしまい、革命家のバレンティンも拷問の末に死んでしまうことになるのですが、僕たちの「美女と野獣」」には、全然違うラストを用意しました。映画好きなおしゃべりなオカマとドジなチンピラはどんなラストにたどり着くのか? 最後までどうぞゆっくりとご覧下さい。
 本日はご来場ありがとうございました。